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【株式会社スタンディングポイント 若森 寛】多くのことに挑戦や失敗をしたからといって死ぬことはない

2021/01/18

Profile

若森 寛

株式会社スタンディングポイント 代表取締役

名古屋ファッション・ビューティー専門学校を卒業後アパレルブランドを立ち上げるが、資金繰りがうまくいかず、1年半で断念する。営業力を磨くため、2000年3月に住宅メンテナンス事業を営む株式会社アイジーコンサルティングに入社し、新規開拓営業に従事する。入社2年目の春、現在の事業の始まりとなる新規事業の立ち上げを任される。株式会社スタンディングポイントは、東京都内で洋服・ブランド品を中心に買取・販売を行う買取専門店「エコスタイル」を展開している。現在は社内で活用してきたオンライン学習システムの販売など、リユース事業者向けにコンサルティング事業の立ち上げも計画している。様々な経験を持つ若森氏に、物事の捉え方やお客様との接し方を伺った。

とりあえず自分にもできる掃除から始めた

—— 誰よりも早く出社してトイレ掃除をなさっていたというインタビュー記事を目にしたのですが、なぜそのような謙虚な行動を取ることができたのでしょうか?

20歳で1度起業して、オリジナルブランドで洋服を作り、セレクトショップなどに販売していましたが失敗して、22歳の時にその事業を辞めました。当初は裏原系などインディーズブランドの活況期だったので、単純に洋服を作って売りたいと漠然に思って始めました。店舗も売場もないので、いわゆる手売りでした。
 ブームもあってか、そこそこ売れていたので、店舗にも置かせて貰えるようになり、いい気になっていたんですよね。経営のことについて一切学ばず、お恥ずかしい話、請求書を作って送る当たり前のことさえ知らなかったんですよ。
そのうち「請求書来ないし、払わなくていいや」と思われたり、セレクトショップの経営が行き詰まった時にうちの商品が持ち逃げされて売上金が払われないということも起きました。売り上げはあるのに手元にお金がない状態になってしまって、工場への返済期日がきても払えなくて、事業を辞めてしまいました。

 そんな失敗もあったので、少しは謙虚になれたのだと思います。
 父も祖父も会社をやっていましたが、父の会社は僕が高校2年の時に倒産しました。それを間近で見ていた時に、僕は「あ~あ、倒産しちゃった。。。継ぐつもりだったのに。。。」くらいに思ってました。

 でも、実際自分がやってみると1年半で潰してしまって、大口叩いた割には大したことができない自分の実力に直面しました。もっと自分ができることを増やしていこう、できないことはできるようにしようと思うようになりました。

それで、22歳でグループ会社に入ったのですが、初めは会社や事業の理解から始まり、どうしても教えを待つ姿勢になってしまうと思うんですけど、社会人になって先輩に言われるまで動けないのが単純に耐えられず、なんかないかなと思いトイレ掃除から始めました。掃除を終わらせておいたら先輩も直ぐに仕事に取り掛かれるし、喜んでもらえるのではないかと思い勝手にやるようになりました。

 起業は一度、失敗していますが、会社に入った時も「いつか起業しよう」という想いは忘れられなくて、正直、3、4年経ったら起業しようと考えていました。その頃からかな、本も読むようになりましたね。スキル本はもちろん、自己啓発本とか哲学的な要素のある本を読みました。失敗したからこそ、謙虚になれたし、足らないものも見えたり、色々と吸収するようになったのだと思います。

赤字続きでしんどかったけど、楽しかった

—— 事業を始めた後、「ど素人の私は赤字を続け、立場も仕事も失う寸前で」といった壮絶なストーリーを拝見したのですが、なぜこの状況で折れずに経営を続けることができたのですか?

しんどいんですけど、楽しかったんですよね。自分のお店を持つとか自分が経営をするとかって、自分が100%影響できる範囲じゃないですか。一切合切の権限も委譲されているわけなので、今の結果=自分の結果でしかなくて、悪くても良くても自分のせい。

 オープンの時は「ど素人が経営するお店に人なんか来るのか」って自分も半信半疑だったんですよね。でも、オープン当日に、10時開店なのに朝の6時から60人くらいお客様が並んだんですよね。それがすごく嬉しくて、休みはもちろん無かったし、徹夜して仕事もしていたのですが、そんな時間もあったせいか、感極まって、仕事で初めて泣きましたね。

 1号店は子供服専門と子供用品専門店でやリました。地域には小さなリサイクルブティックと呼ばれるようなものは存在していたのですが、大型店舗で、車も多く駐車できるようなリサイクルショップはうちくらいでした。

 だから、期待の表れでお客様は見に来られていたのだと思いますが、僕の中ではそうは思っていませんでした。自分が一生懸命頑張ってお店を準備したことで並んでいただけたのではないかとすごくポジティブに捉えて、世の中から認められたような気がして涙が出たんですよね。

全ては受け止め方次第

—— 3人で年中無休でやられていたそうですが、しんどくなかったのですか?

23歳のど素人がやっている店なので、お客さんはいっぱい来るんですけど単月赤字が続いたんですよね。キャッシュは垂れ流し、手元の資金も溶かしていく状態でした。もう、やるしかないと思ったので、嫌でしたがリストラもしました。でも、23歳でリストラを決断させてもらえたという前向きな捉え方もしていて、だって、そんな経験、普通ならできないですよね。

 誰を残すかも自分で決める。結局、パートさん2人と一緒に120坪のお店を朝10時から夜8時まで年中無休で営業しました。もちろん、リストラした人からは、「なんで私は残れないんですか?」とか、家計の事情とかも散々、言われましたし、その時は前向きに捉えるように自分自身に言い聞かせていたものの、本当はきつかったですね。自分が採用して教育したパートさんを解雇するわけですからね。

でも、本を多く読んでいたのと、1回失敗している経験もあるので、嫌なことがあっても、家に帰ると自分がまだ潰れていないというか、まだできることもいっぱいあるし、人生って課題がなくなったらつまらないよなとか、思う自分がいました。課題だらけだったので、きついんですけど逃げる気はなかったんですよね。

 色々ありましたが、起業して、分社化して、今振り返ってみても、人生、なんでも受け止め方の問題なだけだということですね。会社や店は世の中にいっぱい存在しているので、どの会社に行っても学べると思うんですけど、教育に対する考え方や関わり方は異なると思います。自身の体験もありますが、学びへの渇望は持つようにメンバーにも常に言い続けています。

物ではなくてお客様をしっかりと見ることを大切に

—— コロナによる変化の渦中で、不安よりもニューノーマルなワクワクの方が大きかったのですか?

そうですね。危機感はありましたが、応援してくれるリピーターの方の存在や従業員の仕事振りを見て恐怖感は消えました。数字は確かに下がるのですが、リピーターの方と会社、つまり従業員との関係性を信じていたので、そこまで落ち込まないだろうと思えたんじゃないでしょうか。

 これまでにも、接客研修もしたり、全店で接客コンテストなども行なってきました。同業他社の多くはウェブマーケティングなど、新規集客に力を注ぎますが、私達はお客様にどういう印象を持ってご帰宅いただくか、そういうところに意識を注いでいますね。もちろん、ウェブマーケティングも重要なんですけどね。

 どの業界にも競合は存在するし、勝ち残らないといけないのはもちろん理解していますが、競合を意識し過ぎると自社が大事にしていることを失ったり、うまくいっている会社を見て、一喜一憂したりするじゃないですか。それよりも、事実として、今日来てくださったお客様がいる。うちが良くて来て頂いているわけで、いかに来てもらうかよりは、いかに帰すかを大事にしようということを弊社では大切にしています。だから、お客様の情報は高い精度で蓄積されて活かされています。

僕らの商売(リユース事業)は、物に目が行きがちですが、物ではなくてお客様を見ることですね。
お客様は高く売りたいと考えていることは当然ですが、+αで考えると気持ち良く売りたいというのがあると思うんですね。それって、やはり物ではなくてお客様をしっかりと見て接客をして、思い出やエピソードまで汲み取ることが+αに繋がると考えています。

 以前、社員を交通事故で亡くしたことがあります。社員の死をきっかけに、僕はひとりの人と深く付き合うこと、「今を大切にすることの連続こそが人生を豊かにするのだ」と思うようになりました。
 当然、たくさんの機会を頂いた方が色々な人と関われるので楽しいと思いますが、自分自身が亡くなった時のことを考えると、何となく知っている1000人が葬儀に参列してくれるよりも、ものすごい密な50人が来てくれる方が素直に嬉しい。そんなイメージなんかもしたり、そんな濃い人生を送りたいなって思いました。これって、お客様との関係性さえも同じかなって。だから、お客様との時間は大切にするように入口から出口まで、教育には力を入れていますね。

企業の存在理由は「社員を物心ともに豊かにすること」

—— 社員を選ぶ際に、「面倒くさい社風にあう勤勉な人採用している」とありますが、どのような学生が魅力的だと思われますか?

採用に関わる社員には「弟や妹に思えるかどうか」なんかを聞きますね。感覚でしかないかもしれないですが、結構重要だと思っています。洋服が好きとか、ブランドが好きとかは+αでしかなくて、センスは磨けるので、気にしなくても大丈夫です。

 企業理念の「社員の生活向上」に、僕の中では「物心ともに」を入れて考えています。同業種と比べると平均年収も高いですが、「物心ともに」の「心」の部分ですが、僕の経験から20代のうちにいろんなことを学んでおくとすごくいいなと思ったので、とにかく色々考えられるように機会を与えることは「心」を豊かにできる方法の一つだと思っています。「社員を物心ともに豊かにすること」、これが弊社の存在理由です。そこは創業以来、ブレない想いですね。

 僕自身が、社員との関係性と言いますか、それを掌握できるくらいの規模で1つの会社だと良いなと思っています。社長が社員の名前を分かる会社がいいなと思っていて、それを忘れないために毎月社員の誕生日会をやるなどの工夫をしていますね。

思った以上の人生は歩めない

—— 最後に学生へのメッセージをお願いします。

僕自身、20歳で1度起業して失敗し、22歳で入社した会社で社内ベンチャーで立ち上げて、自分が代表になっているのですが、自身が思っている、想像している以上の人生は歩めないと思っています。
 自分がどのような角度で成長していきたいか、どんな人生を過ごしていきたいのか、ある意味、我がままに考えていくことは20代前半には大事な事だと思います。

 多くのことに挑戦や失敗をしたからといって、死ぬことはないので、挫折しても全然良いと思います。人間なので、ポジティブに考えたり、ネガティブに考えたり、前に出れたり、後ろに戻ったりは当たり前にあると思います。

でも、その都度思うのが「後ろ向きに下がっても、もう一歩前進しようかな」と思えた時が成長できるチャンスです。就活も同じだと思います。自分が苦しいと思っている時は周りの人もそう思っているので、チャンスだと捉えて、前のめりで就活してみて下さい。

株式会社スタンディングポイント

設立 2006年4月3日
資本金 1000万円
売上高 12億4591万円
従業員数 49名
事業内容 1.洋服・ブランド品の買取専門店「エコスタイル」の運営  2.コンサルティング事業
URL https://standingpoint.co.jp https://style-eco.com
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