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【株式会社西村組 西村 幸志郎】「自分はどう生きたいか」次期社長としての苦労と決断とは

2020/10/06

Profile

西村 幸志郎

株式会社西村組 取締役 採用担当

株式会社西村組の社長の息子として生まれ、妬みや、偏見に戸惑いながらも個性や自由を大切にしてきた西村氏。学生時代の日本一周をきっかけに会社を継ぐ意思を固め入社し、採用に携わる。コロナウイルスを受け、会社説明会、筆記試験を全廃止。会社に興味を寄せる人全員と面接を行うなど、環境の変化に柔軟に対応してきた。変化し続ける会社の次期社長の立場にある西村氏にこれまでの苦労や家業を継ぐきっかけなどを聞いた。

大切なことを思い出させてくれた日本一周

—— 小学生時代に赤色のランドセルを懇願するなど個性的な部分があったとお聞きしました。

いい意味でも、悪い意味でも、周りのことをあまり気にしなかったです。その時はただ赤色がカッコ良かったから赤色のランドセルが欲しかったのに、親から「男は黒」と言われて不貞腐れました。他にも修学旅行で仲間外れにされたり、サッカーの選抜で省かれたりした経験があります。

大学生の時には自我がさらに強くなって、違うステージでものを見ている感覚になり、周りの人たちが子どもに見えてしまいました。そういう自分自身の上から目線な態度を気に食わない人たちは自分のことを嫌いになりました。反対に、自分をしっかり持っていると言ってくれる人はいましたが、今振り返ったら自分勝手だったと思います。

その後にいつの間にか人に感謝することを忘れていることに気付いて、大学4年生の時に日本一周をしました。旅に出たら誰かにお世話になって助けてもらう経験や、人との関わりを通して心から感謝する経験を改めて思い出しました。

従業員やその家族を守るかっこいい社長になる覚悟

—— 社長のもとに生まれ、大変さはありましたか?

今振り返ると、社長の息子としての立場から逃げたいと思っていました。

小学生の時は同級生に呼び出されて喧嘩を売られたのに、社長の息子としての見られ方もあったため、自分が謝らなければいけないというような理不尽も経験しました。

中学校では車で3時間くらいかかるところまで通ってサッカーをしていました。その時が、自分の住む湧別町から少し離れることができる時間でした。

そこでは「社長の息子だからいいな」という様に自分の家のことに対していじられることはありませんでした。偏見の目で見られない環境がすごく居心地良くて、「外に出たらこういう世界があるのか」と思って、心のどこかで早く自分の住む湧別町から出たいという思いはありました。

――大学卒業されてすぐに西村組を継ごうと思っていましたか?

最初は全然継ごうとは思っていませんでした。会社を継ごうと決めたきっかけは二つあります。

一つ目は、日本一周の旅をした時です。一人で旅をしている時の夜は暇で寂しかったので、その時に「自分はなぜ生きているのだろう」と生きる意味を考えました。その時に自分がどう生きたいかを3つ考えました。一つ目はかっこよく思われたい、二つ目は人と違うと思われたい、三つ目が有名になりたいというものでした。今では三つ目が変わって、自分の名前にあるように、人の幸せを志していきたいと思っています。

一つ目のかっこよく見られたい部分は自分が満足しているのが一番いいですが、「かっこいいと思われたい人が家業を継ぐことがかっこいいと言えるのか」と自問自答しました。そこで、長男に産んでもらって、従業員やその家族を守るチャンスがあるのなら会社を継いだ方がかっこいいのではないかと思い、実家に帰り、会社を継ぐことに決めました。

二つ目のきっかけは、旅から帰った後に先代の会長である祖父が亡くなったことです。その時に祖父から「会社を継いでくれ」と言われている様にも思えて、会社を継ぐ決意を固めました。

――次期社長としてのプレッシャーはありますか?

最初から覚悟していました。自分がやるしかない、これが自分の選んだ道なのだと思っていました。

一年目は専門学校に行きながら土木のことを勉強しました。二年目は現場に行きながら、コミュニケーションの勉強や後継者育成の研修に参加する中で、ビジョンとミッションは会社を経営する上ですごく大切なものだと思いました。

自分の会社では、社是である「誠実」と社訓である「和」を掲げています。「社是」とは「会社が正しいとすること」であり、「社訓」とは「会社が守るべきこと」です。しかし、自分が入社した時はその社是と社訓がただ掲げているだけになっていることに気づきました。

ビジョンとミッションの大切さを後継者育成の研修で学んでいたので、このまま「社是」や「社訓」を理解していない人を採用し続けていたら、自分の代になった時に会社に残る人はいないのではないかと考えました。そこで代替わりをする前に会社の基盤を整えておきたいと思いました。

現在は受け継がれてきた社是社訓をもう一度深掘り、今の時代に合うように認識を合わせていこうとしているところです。また、自分が社長になった時に一緒に会社を作ってくれる人を集めるために、採用に力を入れています。

――西村組に入社して失敗したことはありましたか?

入社してすぐにありました。採用を始めるまでは時間的にもキャパシティ的にも余裕があって、会社の色々なところに疑問を感じて、それに口を出してしまったことがあります。その時に「社長の息子が言ったことは絶対従わないといけない」みたいな感じの空気になりました。それで今でも自分自身のことをよく思っていない人もいます。その状況はまだ完全には変わっていませんが、現在は乗り越えようとしているところです。

その失敗をしないための教訓は、自分が思うより7割り増くらいで柔らかくいうことだと思います。最初にきついことを言ってしまったらその後に緩めることは難しいです。1回目で伝わらなかったらやり方を変えていくという方がいいかなと思います。この経験から伝え方は大事だということを学びました。

信頼されるには素直であること

—— 採用を担当されている西村さんはどんな人を採用したいと思いますか?

本当に素直な人を採用したいです。後継者や経営者の特権ですが、採用の過程を最初から最後まで自分の目で見ることができます。しっかり時間をかけて、今後の西村組を一緒に引っ張っていってくれる仲間を探しています。

自分が求めている「素直」の例として、カレー屋さんを良く出します。カレー屋さんに入社したのに親子丼を作りたい、カルボナーラをつくりたいとわがままを言う人がいたらどう思います?困りますよね。自分で選んだのに。入社したらまずは掃除や下ごしらえを覚える。それが一生懸命に完璧にできて初めて調理のチャンスをもらえる。さらにひたむきに頑張る。そのように信用を積み重ねて初めて信頼に繋がります。

ここまできてようやくカツカレーやりたいです!スープカレー始めてもいいですか?カレーうどんは?など、芯のぶれない提案やチャレンジが承認されます。その上で信頼を勝ち取り、結果を残して初めて親子丼やカルボナーラをメニューとして採用されると考えています。

今のところはその人と最初に出会った時から入社まで全て見ている状況です。だからたとえ採用が間違っていたとしても自分の目が間違っていたということで、自分の責任になるので後悔はないです。人を採用するときは育てていかなければならないという覚悟を持って採用しています。

――最後に、就活生にメッセージをお願いします。

就活において、今までは「何となくお金がいいから」、「休みがいいから」、「福利厚生がいいから」という本質的ではない部分で会社を選ぶ就活生が多いとすごく感じていました。だからコロナウイルスによる採用の変化は良いきっかけだと思います。

危機的なことが起こった時に変化に対応できない会社は生き残れない時代になってきていると思います。インターネットが普及し、地方と都心部の格差がなくなってきて、新型コロナウイルスの影響もあり、田舎の方がいいのではないかという新しい価値観が生まれていると思います。

本当にいい企業に出会える機会がコロナウイルスの影響で誕生したオンライン面接によって増えていると感じています。その分選択肢が多くなり、悩むことも増えると思います。それでもたくさん悩んでください。「自分たちの世代から新しいスタイルの就活が誕生したのだ」とプラスに捉えて頑張ってください。

株式会社西村組

設立 昭和11年
資本金 4500万円
売上高 64億円
従業員数 214名
事業内容 総合建設業/港湾工事/建設コンサルタント/建築設計/設備・設備工事関連
URL http://www.nishimura.co.jp/ https://lin.ee/Qe4TPOk https://twitter.com/Nishimuragumi_O
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