前代未聞、女性限定の英会話教室
—— 起業をするきっかけについてお伺いしたいです。
まず、株式会社by ZOOが行なっている事業は、お客様が英会話初心者の女性のみであり、世代は30代以降のオトナ女子向けの英会話教室です。都内と神奈川県合わせて、全部で9校あり、現在通われているお客様と卒業生で、合わせて9千名くらいの英会話スクールです。
21年前にアメリカの大学院にいたのですが、そこでお世話になった先輩が、大手英会話スクールの幹部で英会話スクール業界についていろいろと話を聞いていて市場の将来性とビジネスとして興味を持つようになりました。
その頃僕は、ベンチャーキャピタリストをしていました。ただ、父が商売をしており、漠然と自分も起業したいと思っていました。ベンチャーキャピタリストとして働く中で、自分の支援している会社の人々が生き生きと働く姿を見て、自分の中で起業したいという思いが強まりました。
アメリカの大学院の友達が日本に来ていたので、その友達を誘って英会話のビジネスをすることになりました。英会話事業の市場は、昔からあるので、同じやり方で事業を進めても規模が大きいところに負けてしまいます。
そこで、どんな人を支援したいかなと考えた時に考えたのが、今まで大手スクールが見落としていた「英語を習いたいけど習っていない人たち」でした。こうした初心者の方々は、「自分の苦手な英語を他人に聞かれたくない」とか「グループレッスンで上手な方や異性のお客さまの目が気になる」といったコンプレックスを抱えています。
もう一つ英会話を始めるにあたってハードルになるものが、人の目が気になるということです。自分が下手な英語を喋るのが嫌とか、グループで英会話をする時に、発音を聞かれるのが嫌という方が多いです。
現在の英会話事業の市場では、周りの目が気になったり、自分には敷居が高いと思っている人たちが英会話を習いにくいという現状があるので、女性の初心者限定に絞り、特に30代以降の方向けに特化したサービスを行っています。
ターゲットを絞らず、横に広げたビジネスをする場合、英会話教室はお客様から来てもらう仕組みになっているため、広告や知名度が大きく関係してきます。そうなると、大手に勝てないので、ターゲットを狭く絞ってビジネスをしています。
逆境こそチャンス
—— 事業を進めていく中で、逆境経験はありますか?
資金が尽き、投資家の方達と意見が一致せず、進む方向性が決まらない時期は大変でした。
英会話のビジネスは、まずスクールという箱が必要になります。したがって、物件を借りて内装工事を行い、さらに、売上がでてくるまでの間の人件費はじめ初期投資が多くなってしまう事業です。ただ、幸いベンチャーキャピタリストとしての経験が初期の資金調達では幸いしました。
しかし、3年後に資金が尽きてしまいました。僕自身は、ある種達観して物事を観る癖があって資金面の問題にはその状況の酷さとは逆に冷静に見ていました。しかし、投資家の立場に立てば自分たちの投資した資金が回収できなくなるわけですから、不安とあせりでいっぱいだったと思います。
こういう状況になると、船頭多くして船山に登るとなってしまい危険です。意見が一致しない状態では、進む方向性が定まらず状況が悪化してしまうことになります。このままでは会社が危ないと思ったため、役員の方に降りてもらい、株を自分で買い戻し、1人社長1人株主の状態にしました。この1人社長1人株主の体制にしてから、3ヶ月で黒字化しました。
大変でしたが、チャンスだと思っていました。1人社長1人株主の状態で、自分で責任を持って会社の立て直しを覚悟すると、会社を自分の意思でコントロールでき、周りに振り回されなくなったので良かったです。
僕は性格的にパニックに陥るよりは達観して淡々と問題に取り組むタイプなんですが、「1人社長1人株主」というすべての責任を自分に集約させる状況に自らを追い込むことで速やかな会社の立て直しをはかることができたと思います。
逆境を経験して学ぶ事と、失敗を経験して恥をかく事を比べた時に、絶対に逆境を経験して学ぶことの方が価値が高いので、逆境こそチャンスだと思って、冷静に行動するようにしています。
若いうちに経験を積むべき
—— これからの時代、生き残っていく若者についてお伺いしたいです。
若いうちから安定志向にならないことは大切だと思います。20代で安定志向になってしまうと、30代になった時に結婚や子供ができ、ますます安定を求めて動かない言い訳ができてしまいます。安定は得られても、心の平穏は得ることができず、ストレスが溜まっていく一方だと思います。
起業を推薦するわけではないのですが、今の時代ベンチャーキャピタルも増えてきて起業するには良い環境になっているので、失う物が少ない若いうちに挑戦していった方がいいと思います。
起業せずとも、例えばベンチャー企業のような小さい会社に入ることで、会社の意思決定を任せてもらえることもありますし、経営者と近い環境で働くのは間違いなく得られるものが多いので、絶対に自分のためになる経験をすることができます。かつては一度中小やベンチャー企業に入ると大手に戻ることは難しいと言われていましたが、今はむしろ逆。ベンチャーで経験を積んだ人材のほうが、同じようにベンチャーでも転職できるし、大手企業へも転職しやすい時代です。
結局のところ一番の資産は経験です。経験値がないまま大手企業へ入ればしがみつくだけとなってしまいますが、若いうちに経験があれば会社に媚びることなく自分の人生を歩むこともできるでしょう。それができるのはフットワークが軽く背負うものの少ない若い時だと思います。
自分を信じて生きていけ
—— 最後に、就活生や未来の就活生にメッセージをお願いいたします。
どんなことがあろうと、自分を信じることが大切です。
今この時期に就活生でいることはとても運が悪いことだと思いますし、今社長をしている方達とお話ししても、このコロナショックの時期に社長をしていることを後悔している方は多いです。
ただ、こういうコロナショックのような大変なことは人生において何度か訪れるものだと思っています。大変なことが訪れることを覚悟していれば、その時に冷静に自分自身を見つめて行動することができると思います。
大変な時こそポジティブに考えるべきです。例えば、今回のこのコロナショックを恨むのではなく、いい勉強の機会が来たという風に捉えることで、自分以外に理由を持っていかない思考法になれます。
思い通りにならない瞬間に、自己否定してしまう人は多いのですが、生きていく中で上手くいかないことは絶対にあるので、上手くいかない時こそ試行錯誤し、自分は絶対に大丈夫だと信じることが大切だと思います。
上手くいっている人は、基本的にうまくいくまで試行錯誤してきた人たちです。他人ばかり見て比較し一喜一憂するのではなく、自分は自分の道を歩むべきです。他人から学ぶべきは、その人のポジションや財産ではなく、その人が今に至るまでどのような道のりを歩んできたのか、どのような苦悩と対峙してきたのか、そして、どのような決断をしてきたのかを観察することだと思います。
今年や来年は、特に就活が大変で、不安になることも多いと思います。去年や一昨年就活した先輩の話は、絶対に参考にしない方がいいです。今の就活環境は昨年までとは全く異なるものですし、そもそも、先輩と自分の人生はまったく異なるものです。自分がこれからの社会人人生を通じてどのようなことを実現してみたいのか、そして、そのためにはどのような仕事からやってみたいのか。もちろん、仕事をはじめればどんどん変わっていくことばかりです。今、自分の頭で真剣に考えて、試みること。みんなが西を向けば、自分は東を向いて歩く気概が今のような時代には大事だと思います。