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【株式会社ビズライト・テクノロジー 田中 博見】ロジカルに考える能力~アフターコロナの社会で求められる人とは~

2020/09/01

Profile

田中 博見

株式会社ビズライト・テクノロジー 代表取締役

62年、旭川市生まれ。大手家電メーカー系の工場へ就職。3年後、コンピュータ業界へ転職。93年、アルファークラフトを設立、代表取締役社長に就任。6年3月、株式会社ビズライト・テクノロジーを設立、代表取締役社長に就任。同社はIoTやAIを利用したハードウェア、ソフトウェア開発を中心に事業を展開している。22年間、会社を経営してきた田中氏にこれからの社会で求められる人物について伺った。

世界初のデジタルサイネージ

—— 運営している株式会社ビズライト・テクノロジーの事業内容について教えてください。

もともとは受託のソフトウェア開発事業でスタートしました。紆余曲折ありましたが、当社は14期目で、5年くらい前からオリジナルのハードウェアの開発も始めました。基本的にはソフトウェア開発と自社でのハードウェアの提供など、IoT分野に力を入れています。そしてメディア事業として、埼玉高速鉄道内でのデジタルサイネージの広告オーナー、メディアオーナーとしての活動。この三本柱で経営しています。

東京に埼玉高速鉄道という路線があるのですが、電車内でデジタルサイネージという形の広告が流れています。そこのデジタルサイネージは、当社がハードウェアを開発して、メディアのオーナーとしての事業を今年の4月からしています。

デジタルサイネージとは、平面ディスプレイやプロジェクターなどによって映像や文字を表示する情報・広告媒体のことです。そのデジタルサイネージにはAIカメラが入っているのです。電車に乗っている人で、女性がよく広告を見ているとわかると、広告の種類を変えて女性中心の広告にする、年代の高い男性が乗っているとそういう方々向けに変えようとか、デジタルサイネージが自分で判断をして広告を出すことができる機能を入れています。電車の中で動的に広告の内容を変えるという広告ビジネスは、我々の知っている限りでは世界初です。そういうことを1ベンチャー企業がやっています。

でも、何でもテクノロジーが大切とは思ってはいません。結局人間は感情の生き物なので、それをAIが理解できるようになるのはものすごく先のことだと思いますし、完全に車が自動運転になるのはなんだかんだ20年後とかになりそうですね。ただ、可能なところから変わっていくでしょうし、今回のコロナウイルスの影響で劇的に社会は変化するでしょうね。劇的な変化に対して、テクノロジーは何をできるのかということは考えています。

劇的に変化した社会で求められるロジカルに説明する能力

—— コロナの影響もあり、これからの社会は変わっていくと思いますが、どのような人が必要になるのでしょうか。

おそらく、今の世代は先輩に『君って○○できないよね、なんで?何年入社?』って言われて『2021年です』って言うと、『お前コロナ世代か!』ってなると思います。少し前で言う、ゆとりみたいな感じですね。これからみなさんは、今までの教育を受けている前提で世代が違う人と話すと、とてつもなく忌避されたり馬鹿にされたりすることがあると思います。

でも逆に、この世代だからこそ、リモートなのに人の気持ちがわかる子、そのようなニュータイプって生まれてきていると思います。僕らはリモートだと対面と違って、人の気持ちや雰囲気を上手くつかめないです。でもこれからのアフターコロナ以降の子はかなりの割合で授業や面接をズームでやっている、いわゆるリモート世代みたいなのが出てくると思います。

僕は今58歳で昔の人なので、コロナ世代が、『こうがいいと思うんですよ』と言うと、『本当にそうなの?』って言うと思います。そういう時に、社長は昔の人だからわからないんだ、となるのではなく、きちんと数字とかデータなどの証拠を持ってきて、きちんと深く物事を考えてロジカルに説明できるか。そして情熱があるかどうか。それが大事です。

仮説を立てる能力、仮説に対して、さまざまなデータ収集をして、ロジカルに説明する能力。これを用意しないとコロナギャップで片付けられて、世代間ギャップはもっと大きくなります。世代や時代を言い訳にせず説明できるロジカルな人が求められると思います。

自分のミッションをすることで乗り越えた困難

—— 過去の失敗談はありますか。

平成10年に札幌で創業してから22年間、会社を経営しています。ふたつの会社の片方を子会社化して、平成16年に札幌証券取引所のベンチャー向けの市場に上場しました。僕が社長で、共同経営者を会長という形で置いていました。

当時、ネットバブル期で、『時価総額経営』という言葉が流行っていました。時価総額というのは、総発行株式数×一株の値段、いくら出せばこの会社を買えるか、ということです。時価総額が大きければ大きいほど良いんだという流行の経営スタイルがあって、世の中のベンチャーは、こぞって不正会計をしたり悪いことをしたり、とにかく時価総額を上げようという時代でした。

僕は時価総額を上げようとしていた訳ではなかったのですが、共同経営者が完全にそっちの方向に流れて行ってしまい、僕の企業が暴走し始め、そこに引きずられていきました。そして、マネーゲームをする人達が、僕の会社に出資をしてきたんですね。それを聞き入れたのは会長だったのですが、僕は経営者でありながらその暴走を止められなかったんです。ものづくりが好きでこの仕事をしていたはずなのですが、なんとなく自分も時価総額経営した方が楽なのかなと思ってしまいました。

簡単にいうと外から会社を乗っ取られた形になり、マネーゲームの箱に使われるようになりました。なので、いろんな手段を使って社員を連れて別会社を作りながら現在のビズライトに移管しました。ネットでもずいぶん叩かれましたし、僕自身も会社を辞めて抜けたときは、実名を出していたSNSで既存の株主とかに個人的に攻撃されましたし、嫌な思いを色々しました。一番大きな失敗はこの出来事です。

――その困難をどうやって乗り越えて、どのような教訓を得たのでしょうか。

成功をしていないから、失敗しかしてないっていうのはありますね。結局、事業の本質で失敗したわけではないので、余計なことしたと思いますし、二度としてはいけないですね。

自分のミッションをする、関係のないことには手を出さないことを意識しながら、この困難を乗り越えました。自分のミッションとは何かを考えたときに、お客様に何らかの形で社会に貢献できるのを、ものづくりを通して提供していくことだと思います。それを社長という役割を通してやっているだけです。技術を通じて社会に貢献することだと決めたから、それ以外の方法で社会に貢献するということはしてはいけないです。

多角化経営にも良さがあるとは思うんですけど、そこに一貫したミッション、理念があるのかということを常にチェックしないといけません。個々人の生き方にも言えることです。だから会社の理念に共感できないのであれば、そこで働かないほうが良いと思います。給料良いからという理由で働くのは、働いている側のスタイルとして卑怯ですよね。理念を共有できないまま勤めるのは変です。逆に働いている側から見て、トップがきちんと理念を言えないのなら働く価値がないと思った方が良いです。そのような部分に関しては注意深く見た方がいいですし、疑った方が良いですね。

今、理念が無いと人材を確保できないので、理念経営が流行っています。でも、僕から言うと、実際は理念を持っていないという経営者が非常に多いです。そのような怪しい企業に多くの就活生が騙されているはずです。

――怪しい企業を見分けるにはどうすればよいのでしょうか。

上場を目指していますって書いているところは疑った方が良いです。本当に上場準備をしている会社は上場する予定を公表してしまうとインサイダー取引になるので、言わないのが普通です。上場するためには、準備含めると3年はかかります。なので『3年以内に上場』とか書いているとそれは嘘ですよね。上場絡みのことを書いていたら注意すべきです。

売上について多く言及する会社にも注意して欲しいです。ユニークな商品を開発して売っていたりして、自分で納得できるなら良いと思います。でも、製品を開発していない商社のような会社の売上が、急激に伸びていたら何かおかしいと疑うべきです。詐欺まがいの訪問販売や押し売りをしている可能性があります。

企業を探す時には、いくつかのフィルター作って、まず疑ってみることが大事だと思います。そうしていくと、企業に関して類推できていくはずですし、自然と企業が絞れていくはずです。

「葬式でどんな人だったと言われたいか」

—— 就活生へのメッセージをお願いします。

これからしばらくは、コロナの影響で会社訪問もできませんし、面接もリモートになると思います。年齢層の高い面接官はリモートで皆さんの人柄をとらえることが苦手だと思います。自分をアピールするときに自分がロジカルにモノを考えられるか、伝えられるかどうかが大事だと思います。個人的な意見ですが、就活サイトのマニュアルにかいてある言葉をそのまま話す人はどんどん排除されていきます。マニュアルではなく、自分の強みは何か、本当の欠点は何か、きちんとロジカルに表現できるかが大事です。面接で自分の根っこから苦手なこと、変なことを言ってみてください。きっとそこに興味を持つ面接官もいると思うし、そういう人がいる企業はあなたを労働力としてじゃなく、人として採用したいと思うはずです。

失敗を恐れるなと言うのがこの記事のテーマだと思います。なので、若いから怖がらずにチャレンジ、とか、失敗しても何度でもやり直せる、とかそういう話が多いですよね。でも僕はそうは思わない。まず失敗の定義をしてほしいです。失敗の定義をしていないのに、失敗を恐れるなという話を聞いても、みなさんはよくわからないと思います。借金を負っても生きているなら、本当の失敗じゃないと思えるはずです。いい生活したいとか、最低限の給料が欲しいとかあるけど、それって自分の生き方を決めるモノにはならないと思います。

自分が死んだときに、葬式でどんな人だったと言われたいかということを考えてみてください。ピータードラッカー(アメリカの経営学者)の言葉で『何をもって記憶されたいか』という言葉があります。僕が彼の言葉の中で一番好きな言葉です。これは葬式の時に言ってほしい言葉と一緒だと思います。あえてチャレンジしてくださいと言うつもりはありません。安全な道を行きたい人もそれはそれで良いと思います。安全な道を選ぶのも人生の中では一つの挑戦です。でも、この劇的に変わった世の中においての安全、失敗を定義していませんよね。これを考えて定義してみてください。

人生の最後に自分は葬式で何と言われたいか。そこへの第一歩を就職活動の中で踏み込めているか。そういう観点で企業を探しているか。是非自分を見つめ直して、豊かな人生に向けて歩んでいってください。

株式会社ビズライト・テクノロジー

設立 平成18年7月5日
資本金 4,200万円(うち資本準備金750万円)(令和元年9月30日現在)
売上高
従業員数 18名
事業内容 ・ソフトウェア開発 ・サーバーインフラ設計/構築 ・ハードウェア設計 ・ファームウェア開発
URL https://bizright.co.jp/
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