自分を変えるために「イキイキ・わくわく」できるかを振り返った
—— これまでで、一番苦しんだという経験を教えてください。
新卒で入社した前職の証券会社で営業をしていた時です。企業規模が大きく知名度も高い。給与レンジも高く、良い会社だったと思います。ただ、私にはその企業文化がマッチしませんでした。個人成績を重視する風土だったため、チーム主義というより個人主義的な企業文化で、社内の仲間は営業成績を競い合う「社内競合」という感じでした。新規開拓の営業ではお客様に警戒されることも少なくなく、売る商品も決まっていてご要望にお応えできないことも多い。人に嫌な顔をされたり、緊迫した雰囲気が苦手な私にとっては苦しい環境でした。新卒だったので、これが社会の全てのように感じて自己否定を繰り返す日々は本当に苦しかったですね。
実はそれまで、大きな挫折経験がありませんでした。学業成績は悪くなく、スポーツも人並みにはできましたし、就職活動も時期がよかったこともあり、競争倍率の高い銀行や証券会社に難なく内定をもらえました。自分は割と器用で、なんでもそこそこできてしまう人間だと思っていました。
言葉を選ばずに言うと、努力して成長することに対し、サボっていたんだと思います。同期が次々と新規受注して営業成績を上げていく中、自分の成績は最下位。このままではいけない。そう思っても、頑張れない。成果を出すための行動すらできていない。そんな自分がどんどん嫌いになっていきました。
自分を変えなければいけないと思い、「自分がイキイキとして、わくわく行動するときはどんなときか」考えてみたんです。すると、「みんなで同じ目標に向かうこと」「アイデアを出し合えること」「貢献している実感が得られること」が原動力になることに気づきました。
業種や職種は選ばずに、自分がイキイキと行動できる会社という軸だけで転職活動をし、当時はまだ約180人程度の社員数だったエイチームの面接を受けました。面接では、「給料はいくら欲しい?」と聞かれましたが、報酬より自分が大切にしたいと思った価値観や働く原動力を重視したかったので、「いくらでも良いです」と答えました。就活時代は、企業のネームバリューや報酬ばかりを見て、自分とマッチした価値観を持つ会社探しができず後悔したので。そして、まずは自分の行動を変えるためにも、エイチームに入社したかったのです。
自分が本当に大事なものは何かを見つめ直すことはとても大切です。希望のすべてを叶えられる環境は絶対にありません。「自分がどうだったら頑張れるのか」を自分と向き合い内省して考える。そして、自分と企業との考え方や価値観がマッチングするのかを見ることが重要ですね。
過去の失敗や挫折経験は成長の原動力
—— この経験を通して学んだことを教えてください。
今でもよく思うのは、前職の証券時代の経験は決して無駄な時間ではありませんでした。それまで大きな苦労や挫折の経験がなく、就職への不安もありませんでした。ですがやってみると想像以上に全然うまくいかない。仕事に情熱も愛情も持てない。会社が良いとか悪いとかではなく、自分自身と向き合うことをしなかった、できなかった。この気づきは自分にはとても重要な体験でしたね。
そして今、社長という役割で、事業を成長に導き、社員の成長を促す立場にあります。よく「成功している」と言われますが、決して自分の能力で成功しているわけではありません。自分に合った企業に出会え、一緒に働く仲間に恵まれ、たくさんの経験をさせてもらえたからです。証券会社時代の経験のおかげで自惚れずに、さぼらずにやれています。
よく、「過去は変えられない」って言うじゃないですか。たしかに、過去に起きた出来事は変えられません。ですが、過去の経験や出来事をどう捉えるかという点では変えられます。その時は失敗でも、それが後々の成長のキッカケや原動力になることもあります。過去の失敗や挫折があったからこそ、新しい気づきや学びを得られます。このように過去の失敗をただ後悔し続けたり忘れたりするのではなく、人生の糧にすることが大切です。
学び続ける姿勢とリーダーシップの発揮が成功への道
—— これからの時代を生き残る若者はどんな人ですか。
生き残る人がどういう人かは分かりませんが、生き残れない人はきっとこうだろうなっていうのはあります。成功した人には様々な成功要因がありますが、失敗した人には共通点があります。特徴は大きく2つ。1つ目は「勉強しないひと」、2つ目は「リーダーシップがないひと」です。反対に、成功している人たちはこれらが必ずできています。
なぜ、勉強することが大切なのか。
いま、ひとつの仕事をするために多くの知識が必要になってきています。インターネットを使い様々な情報に自由にアクセスできる一方で、受け取る情報量が格段に増えています。調べれば簡単に知識を得られるため、「情報を知っていること」への価値はなくなってきたように感じます。
これからの時代、得た情報をどう活用するかが大切です。情報を活用して、自身の知見やノウハウとして身につけて、はじめて「知識」になります。その情報を得る目的や活用をイメージしながら、その情報にアクセスすると、インプットの質が高くなるはずです。そして、実際に必要なシーンになったら、自分の「知識」としてアウトプットする。調べて「理解したつもり」になってはいません。
自分で情報を的確に集めることから仕事だと思います。新しい情報や知識をどんどん仕入れて、とにかく学び続けないと太刀打ちできない時代ですね。自分に必要とされることを次から次に学び続けることは必須です。
成功のための必須条件は「リーダーシップ」です。一般的なリーダーシップとは、チームメンバーをまとめ、目標達成に向けて正しい方向へ導く能力イメージするかもしれませんが、リーダーという役割や立場になくても、リーダーシップは発揮できます。
リーダーシップを発揮できる人とは、例えば、授業中に手を挙げられる学生です。その人が手を挙げたことで、質問しやすい雰囲気ができ、自然と他の生徒も手を挙げられるようになる。こうした雰囲気や空気感をつくりあげたのは、その人の手柄ですよね。その他大勢の景色にならず、自ら行動をすることで、他の人たちの模範になったり、方向性を示したりすることも、リーダーシップです。そしてこのリーダーシップには、様々な出来事を自分事化して考える当事者意識、能動的に行動するオーナーシップが必然的に必要になります。
多くの経験で得た行動や思考の共通項は「つよみ」になる
—— 20代のうち、大学生のうちにしておくべきことはどんなことでしょうか。
己を知ることですね。学生の多くは、就活になってはじめて自己分析すると思います。一つだけ気を付けてもらいたいのが、入社したい企業を決めてからの自己分析がおススメできません。企業が求める人物像やその企業の文化や価値観に合わせて、自分をつくりあげてしまう。そして、あたかもそれが真実の自分であるかのように錯覚します。自分が大切にしたい考え方や価値観は何かを徹底的に分析し、就活の軸を探してみてください。
面接では、学生が「いま何ができるか」よりも、過去の経験や体験を通して入社後の活躍が想像できるかを大切にしています。学生に努力したことを聞くと、すごいピンポイントのエピソードを話すこともあります。限定的な経験や体験が聞きたいのではなく、様々な活動や行動において共通する話を聞きたいです。どのような努力をしたのか、周りを巻き込んでどう進めたのか、当時はどんな思いで取り組んだのか。共通する点があれば、それは再現性が高いと言えるので、働く様子もイメージしやすいです。そのため、面接では自分を作らずにお話してください。そして、自己分析では本当にフラットに自分自身を見つめてみてください。
多くの経験がないと共通点は出てきません。共通点を見つけ出すのは大事なことだと思います。なので、ぜひ活動力を増やしてください。楽しみながら活動した方が継続するので、「学ぶぞという姿勢」よりも、肩の力を抜いて楽しいと思うことをやってみてくださいね。
継続的な行動が大きな成功を生む
—— 若者、学生へのメッセージをお願いします。
難しいことを考えずに、まずは行動してください。毎月1冊本を読む、本で得た知識を必ず行動する、など。実現の難易度が難しかったり、継続できないことよりも、小さなことでもいいので、継続して行動できることの方が重要です。ただ、こうしたシンプルなことを、やり続けられる人はとても少ないと感じています。継続して行動する。これを実践することができれば、きっと、みんなが成し遂げられないような大きな成果を生み出すことができるでしょう。