広報に年間計画は必要?
社内外に対し企業の情報を配信する広報は、企業のビジネス戦略に基づき計画的かつ長期的な年間計画を立てることが重要です。
広報は、企業における商品やサービスのプレスリリースをはじめ、時代の流れに合わせながら情報配信を行います。担当者の中には自社の商品やサービスの情報が乏しいため、年間計画を立てにくいと感じている方も多くいると思います。
1年間となると自社だけでなく市場の動きも変わるため、2年から3年の期間を視野に入れながら年間計画を立てましょう。
時代や流行に合わせたリリースも、場当たり的な対応では、人の心を打つ広報はできません。たとえば、小売業でいえばバレンタインや母の日、クリスマスなど、大きなイベントはメディアも注目する項目です。
世の中のイベントに対し、自社ではどんな取り組みを行うのか、他社にはない魅力を事前にヒアリングしておくことが大切です。
また広報は、自社の商品やサービスに限らず、会社としての取り組みなども情報配信します。たとえば、環境対策として行っている取り組みがあれば、環境省などが考案する環境月間のタイミングでアピールするなど、いろいろな角度でメディアのトピックを分析しましょう。
大手企業であればさまざまな取り組みがあるため、広報にとって情報配信しやすい環境ですが、中小企業にとってはなかなか計画を立てづらいと感じることもあるでしょう。
その場合は、どこに力を入れるのか、情報を配信するタイミングなどを、より効果的に考える必要があります。
広報の年間計画の立て方
広報の年間計画の立て方は、事前調査を行い、目標達成指数の設定や自社のビジネス戦略に合わせて構築します。
はじめに、広報の年間計画にとって必要なのが「事前調査」です。事前調査では、自社の商品やサービスの内容、生産計画、競合他社における商品の動向や展開計画をチェックします。
顧客アンケート調査などを行いながら、顧客ニーズや今後の課題などを具体的に調べることです。次は、自社の商品やサービスにおけるターゲット設定を行います。ターゲット設定では、顧客の年代や年収、生活習慣など、具体的なモデルを描きましょう。
たとえば、自社製品が美容器具の場合は、30から40代の女性、世帯年収500万円前後、独身、週末はエステや友人との買い物などを仮設定します。
ターゲットは、仕事に忙しく週末美容にかける時間をとれない、コストパフォーマンスも考慮し、セルフエステを好むなど、細かな点も想定しましょう。
ターゲットを設定した後は、広報活動を行う上での最終的な目標を設定します。たとえば、「中高年をターゲットに自社製品のコストパフォーマンス・機能性の良さを定着させる」などです。
先に目標を設定することで、次に立てるビジネス戦略や活動内容を具体的に決めやすくなります。次は、ターゲットとした顧客に対し、どのようなメディアや広報活動が効果的か、具体的な戦略に落とし込みます。
たとえば、ネットメディアの中でも顧客ターゲットがよく閲覧するサイトに投稿したり、アクセス時間やキーワード検索などからメディアを洗い出すのもいいでしょう。
顧客のライフスタイルの中で、どのような課題や悩みがあり、何を欲求しているかなど、顧客との接点や解決の糸口となるつながりを模索し検討します。
戦略が決まったら、具体的にどの媒体を使用するか、どれくらいの期間でリリースを計画するかなど、具体的な広報戦略を立てましょう。
たとえば、若い世代への情報配信を行う場合は、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などで情報配信を行い、独自のイベントや自社ホームページへのアクセスへとつなげるなどが挙げられます。
記事の本数や具体的な記事内容を考え、どのくらいの顧客アプローチが可能かを分析・計画します。具体的な戦略が決まったら、広報の年間計画をスケジュールにしていきましょう。
広報の年間計画の注意点
広報の年間計画を立てる際は、企業規模や広報担当者の数による違い、広報活動による効果測定が難しい点に注意する必要があります。
企業が大きい場合は、従業員数や部署の数も多く、社内統制や情報共有をするのが難しいこともあります。
企業規模が小さい場合は、広報を担当する人数が少ないため、マーケティングリサーチが不十分になり、なかなか計画性のある広報ができないという企業も多い傾向にあります。
企業内における広報の課題や悩みを理解し、必要に応じて外部委託したり、外部システムの導入などを検討することが大切です。広報の年間計画において注意すべき点をくわしく見ていきましょう。
広報部門の規模によって計画が立てることが難しい
広報活動は、企業の規模によって社内統制を図ることが難しい、担当者が少ないなどの理由から計画を立てづらい傾向にあります。
たとえば、大手企業においては、自社が開発する製品をリリースするにも、さまざまな部署とのやりとりが必要になります。製品やサービスには社外秘の情報もあるため、リリースを出す際は、さまざまな部署との打ち合わせが必要になります。
大手企業で広報活動を円滑に進めるためには、従業員に社内の動きや戦略を理解してもらうための社内広報が重要になります。
企業の戦略に基づき、広報や販売促進などがどのような活動を行っているか、顧客からの声には、どういったものがあるかなど、部署に関係なく企業にとって重要な情報をタイムリーに配信することが求められます。
企業規模が小さい企業は、大手企業よりも広報担当者が少なく、マーケティング戦略を立てづらいという課題があります。広報担当者は、リリースの作成やメディア記事の校正、自社ホームページの記事作成などで手一杯となる傾向にあります。
戦略的なマーケティング戦略を行うためには、日々の業務の落とし込みをはじめ、人員が足りない場合は一部を外部委託する方法もあります。より企業の情報を世の中に広めるため、攻めの広報戦略を行うことが大切です。
広報は効果測定が難しい
広報の年間計画を作成する上で課題となるのが、具体的な数値を基にした効果測定が難しいという点です。
たとえば、新聞や雑誌媒体への記事掲載本数、メディアでの露出度などが数値化できます。しかし、広報を通した売上の貢献度などはわかりにくいのが現状です。
もし、自社の商品やサービスをメディアに多数露出しても、どのメディアを見て商品やサービスの購入をしたかの経路がわかりません。
また、媒体や広告などに力を入れても、最終的には自社のホームページや関連記事にインターネット上でアクセスするなど、最終的な集客はWebに集中しやすい傾向にあります。
インターネット上でのメディアを広報として利用する場合は、PV数や検索キーワードの数など、今後の戦略に活かせる数値を持って効果測定を行いましょう。
広報の年間計画を立てる場合は、前年の広報に関するデータや数値をまとめ、数値を上回る戦略も入れながら検討することが重要です。
たとえば、ネットやSNSなどを利用して自社のホームページにアクセスを誘導する場合は、通常のPV数から広報戦略を通じて、どう変化したかなどをチェックしましょう。
アクセス数の増減ばかりに注目するのではなく、企業の戦略としてメディアにどう露出するか、より企業戦略に効果的かつ有効な方法を考えるのが広報の重要な役割だといえるでしょう。