自らがいいと思ったものに躊躇せず、まずは取り組んでみる
—— 大学卒業後NTTに入社されていますが、どうしてNTTを選ばれたのですか。
大学生の時の衝撃的な出会い、それがEメール、インターネットでした。「世の中を変える」と感じ、このインパクトあるツールと一生どんな形であろうともつき合っていこうと決めていました。
そのような経緯もあり、インターネットを一生の仕事にしてみたいと考えていました。ですが、当時はネットベンチャーという言葉もまだ無く、どこへ就職すればいいか途方にくれることに。そんな時、たまたま見たテレビCMで「マルチメディアを形にするNTT」というキャッチコピー。これだ!と思い入社しました。
――なぜ起業しようと思ったのですか。
中学のときは、弁護士か小説家になりたいと思っていました。弁護士は、なんかドラマを見てかっこいいなって思ったんでしょうね、理由はもう思い出せません。小説家は、一人っ子だったことから本を読むのが好きで、それが面白かったら自分でも書いてみたいと思う、みたいな感じです、たぶん(笑)。
大学受験の時に、中央大学の法学部とか早稲田大学の法学部に受かったら弁護士に、筑波大学の心理学部とか早稲田の第一文学部に受かったら小説家になろうと考えました。
結果、法学部系は全滅。地元の筑波大学心理学部(人間学類)に受かったので、「よし小説家になろう!」と、大学時代の途中くらいまで思っていました。当時、フロッピーディスクに「小説」というラベルを張って、400文字くらい書いて、そうそうに挫折したのを覚えています。小説を書くのは相当難しいです(笑)。その後、インターネットに出会い「ホームページを作ってみよう、そこに心理学の実験を面白まじめにコラム風に載せてみよう」と考え、隔週で勝手に大学のサーバー内にHPを作って連載を始めました。
そのコラムが人気を呼び、「次はいつ更新するのか?」という問い合わせが毎日来るようになり、だったらメールアドレスを教えてくれれば連絡すると記載するようにしました。すると数日で200名以上が。その後メルマガという仕組みが確立し、最終的には6万人の方がメールアドレスを登録してくれました。コラムをまとめた書籍も日中韓で10冊くらい出版して、いつの間にかその世界では有名人に。そうしている内に、サイバーエージェントにスカウトされて、同社のコンテンツ部門の立ち上げ責任者を任されることに。その後、当時のメンバーと独立し、そのまま今の会社に繋がっています。
上場に2回失敗、3回目に成功したのは社会的意義があったから
—— 2018年に上場されてますが、その前に2回上場にチャレンジされてますよね。
上場チャレンジに2回失敗しました。でも、苦労した分、生み出せたサービスも多く、おかげで中小・ベンチャー企業をさまざまな側面からサポートできるようになったと思っています。
――1回目に起業したときの失敗について教えてください。
創業当時はマーケティング支援を軸に、メルマガやブログの受注制作会社をしていました。様々なジャンルのコンテンツを企画・制作していましたが、インターネットが一般化すると同時に、競合会社が増えて価格が下がってしまいました。証券会社の最終審査を通過した月に単月赤字に。皆で話し合い、上場を延期しようとなった直後、役員の半分が辞めましたね。今ではしょうがなかった出来事だと思っています。赤字の会社で頑張りたいと思う人は少数派ですからね。
――2回目の時はどうでしたか。
言われてから作る受託事業から、作ってから売るクラウドツールの企画開発に転換し、中小企業向けに拡販が成功しました。一方で、中小および零細企業さまへの提供が多かったことから数億円の貸し倒れが発生し、赤字に。入金管理や与信管理がとても甘かったです。一方で、この時の上場延期時に辞めた社員は役員1名とスタッフ数名のみでした。それは、「全国、全ての中小企業を黒字にする」という社会的意義があったからだと思います。
また、自身の経営スキルをこれ以上向上させるには、独学では限界があるのではないかと感じ始めました。そこで、ベンチャーキャピタルなどが保有していた株式を、事業の相性が良かった株式会社オプトホールディング(現デジタルホールディング)に保有してもらい、一時的にグループ傘下に入ることにしました。
社会的意義を大事にしてから、応援してくれる人が増えた
—— オプトグループに入って真摯に経営を学んだとありますが、ここで得たもののうち、一番は何ですか。
全部学んだので、全部ですよね(笑)。一番っていうのは難しい。国語算数理科社会で一番重要なのはなんですか、そういう質問と同じくらい一番を決めることは難しいと思っています。全部勉強して、全部の知識を繋げないとうまく行かないと思うんです。
新卒の最終面接で「一番●●な事は何ですか」とよく聞かれるんですよね。でも、一番って言った瞬間に分からなくなっちゃうんです。全部重要だから。これさえ押さえていれば成功する、なんてものはないと思います。
――3回目の上場で成功されていますが、その要因は何だとお考えですか。
応援団が増えたことだと思います。全国、全ての中小企業を黒字にする、というわかりやすいビジョンを掲げ、社会的な意義で困っている人を助けるというところを主軸に置いているビジネスに注力しました。社会的意義があると応援団が自然に増えていきます。
いろいろな会社さんがいろいろな会社さんを連日ご紹介くださり、当社のビジネスを広げてくれました。どのくらい広がったかというと、47都道府県、年間600回、2万5千社の社長さんがうちの経営勉強会に参加するまでになりました。これだけの会社の経営者と接点を持っているネット企業はライトアップくらいじゃないでしょうか。
年間2万5千の企業を支援する経営者が考える、若者が夢の成し遂げるために取るべき手段とは
—— 若者には起業を勧めますか。
まず大前提とし「会社というのは、100パーセント倒産する」ものです。それが、5年後なのか、10年後なのか、300年後なのか、分からないっていうただそれだけなんです。確率論的に早く倒産しちゃう会社が多いって言いますよね、5年以内にとか。
おそらくは、社会的な意義がないと会社っていうのはうまくいかないです。ただ、社会的に意義があることをやる時にわざわざ起業すると、会社を大きくするまで、強くするまでに5年も10年も時間がかかってしまうんです。故に志が高ければ高いほど、起業はあまり勧めません、本当に大変ですし、時間もかかるので…。
社会的に意義のあることをやろうと思ったら、すぐにそれを実現しないといけないので、例えばサイバーエージェントのような大きい会社のグループ会社でやる方が圧倒的に早くできますよね。ブランドも、お金も、リソースがあるわけですから。
必要なものは社会的な意義。でも、社会的意義を本当に達成しようと思ったら、ゼロから起業している暇はない。この矛盾を解決するのって、本当に難しいですよね。「ゼロから起業する」というより「人の力を借りて業を起こす」と考える方がシンプルだと思います。
シリコンバレーみたいに大企業の資本を仰いで、大企業のリソースを活用するみたいにやった方がダイナミックでスピーディーな変化が起こるんだろうと思います。日本だとオーナーシップに拘って、余計にイノベーションのスピードが落ちてしまっていると感じています。
――今後、若者はどうしたらよいと思いますか。
イケてる大きなベンチャーの社長にアポを取って、口説いて、お金とリソース出してもらって、社会を変えていったらいいと思います。それだと、ローリスクハイリターンで成したいことを成し遂げられます。
もし中小企業を黒字にし、日本を再生したいと考えている起業志望の人がいたら、是非弊社に連絡すると良いと思います。世の中のためになるなら「なんでもやってやろう」と驚くほどのチャレンジをしていますから。提供サービスの多さにびっくりすると思いますよ(笑)。