住宅業界に新たな風を吹かせる
—— 事業内容についてお伺いしたいです。
住宅の内装、設備のEC事業をメインにやっています。普通、工務店さんが内装や設備の部品を購入されるのですが、株式会社TOOLBOXではB to Cで事業を行なっているのが特徴です。
購入するお客さんのほとんどが、リノベーションや新築工事をしている最中の方です。お客さん自身で購入し、プロの方に取り付けをお願いする場合や、プロの方にこのアイテムを使いたいと伝え、購入してもらい、取り付けてもらう場合が多いです。中には、DIYされる方もおられます。
なぜB to Cで、住宅の内装や設備のEC事業をしているかと言うと、家を建てようとすると、お客さんにとって意外と不便なことや不自由なことが多いためです。家を建てることに関して、顧客側に主導権がない今の住宅業界の現状を打開していこうとしています。
上司を見て仕事をするな、お客さんを見て仕事をしろ
—— 転職をしたと伺ったのですが、なぜですか?
僕は前職でゼネコンのデザイン部署に勤めていました。デザインとは、自分の中から湧き出てくるものですが、お客さんの前にデザインを出すにあたってまず上司にプレゼンし、判子をもらわないといけません。
その上司は、さらに上司にプレゼンをしてハンコをもらわないといけないので、お客さんの前に出される頃には、自分のデザインとは違ったものになっていることが多々ありました。そうなると、お客さんを見るのではなく上司を見て仕事をするようになってしまいます。それに嫌気がさし、今の会社に転職しました。
株式会社TOOLBOXは、自分で仕事を作り、仕事をこなすという風土が強い会社です。企業に所属すると、企業の歯車になってしまうのではないのかと考える学生さんも多いと思いますが、ウチのグループは創業当初は個人主義で、個人で売り上げを立てて個人で収入を作るイメージが強い会社でした。
やりがいもあり、自分とお客さんで関係性を作っていくことが重視されています。大きい組織になると、自分と上司の関係性を作っていくことが重要になり、自分とお客さんとの関係性はそこまで重視されません。
このグループのいいところは、「自分でお客さんを見つけて来なさい、お客さんのために自分ができることは何か考えなさい」という方針です。その方針に居心地の良さを感じる人たちが集まっています。
チームのために動ける人となれ
—— 事業を進めていく中での失敗談をお伺いしたいです。
ある時、社員の何人かが辞めたいと申し出た時期があります。その時に言われたのが、会社は私のために何をやってくれるのか、その内容を考えるのは私ではなく会社じゃないのか、ルールが何もないからやりにくい、という意見でした。
個人主義でやっている会社で、個人主義ではない人たちが増えて来た時に、その人たちにとってはやりにくい環境だからです。当時、自分は自分、人は人という感じが強くなりすぎていました。
誰かが困っていても、自分で解決すればいいという風潮になっていました。自分で解決すべき問題と、自分で解決すべきではない問題があるにも関わらず、すべて自分で解決する仕組みになっており、それによって仕事のやりがいが減り、仕事のやりにくさが増していました。
当時はみんなが独りよがりな状態であり、自己実現を自分一人でしようとしている集団でした。当時のタイミングでこの状態は良くないと感じたため、事業の規模が大きくなるにつれて、部署を作ることにより、チームで働く仕組みにしました。
しかし、独りよがりな人たちでチームを組んでも、ちゃんとしたチームになりません。チームを作るという仕組みで解決するだけではなく、どういう状態でパフォーマンスをあげられるのかを社員に聞くべきでした。
スタッフの気持ちが会社から離れていくのが感じられ、その時から現在に至るまでチーム作りに対して向上するよう取り組んでいます。チームの中でも役割分担が必要であり、チームの責任は誰が負うのか、チームのメンバー育成は誰が行うのか、今はしっかり役割分担しています。
前までは、チームを組んでいたとしても、隣の人が何をしているのか知らない、どうでもいいという状況でした。そうではなく、もっと助け合う精神を取り込んでいきました。
その施策として、評価制度において、評価項目の中にチーム貢献という項目を取り入れました。その上で、まず社員全員と一対一で話し合いをし、今の会社の状況に対してポジティブなのかネガティブなのか、この会社に対してどういうイメージを持っているのかを聞きました。
会社から気持ちが離れていたスタッフとも話してみると、かなりやる気があり、もっとこうしたほうがいいのではないかという意見をたくさん持っていました。その人たちの意見も積極的に取り入れ、チーム力を発揮するようにしました。
一方で、元々あった自発性や個人の力みたいなところはなるべく残したいので、そことチーム力のいいバランスを目指しています。
個人が強い組織は、プロジェクトや商品が面白いものになりやすいのですが、事業全体の強さに欠けます。逆に、組織感が強く個人が薄い組織になると、安定感のある事業を行うことができるのですが、突破していくような面白いことが起こりにくい組織になります。
一流のスポーツ選手はまさに、個人で結果を残しても結局チームが試合で負けてしまっては意味がなく、個人が活躍することは当然で、チームのために役立っているかを重要視しています。
チームがいるから個人がいる、あくまで周りがいてこそ個人がある。そういう意識をそれぞれが持っている組織にしたいです。
早く行くなら一人で行け。遠くに行くならみんなで行け
—— 色々な経験から、大切な学びはありますか?
事業を経営していく上で、「早く行くなら一人で行け。遠くに行くならみんなで行け」という言葉に、まさにその通りだと実感しました。
以前は早く行きたかったので、僕自身も一人でやっており、社員にもとにかく一人でやれと言っていました。しかし、一人で何かをしても大きなことはできず、最初の瞬発的な速さはあるけれど、遠くには行けませんでした。
例えば、船を漕ぐ時、一人で漕いだら漕ぎ始めは早いけれど、遠くには行けません。しかし、大きい船ならば、漕ぎ始めは遅いけれど遠くに行けます。大きい船になると、舵を取る人や料理をする人が必要になり、役割分担する必要が出てくるので、その結果遠くまで行けます。
自分の進む道を決めてしまうことが大切
—— 成功する人としない人の違いはなんだと思いますか?
自分が人にできることを見定めた人が成功できていると思います。自分の場合、ゼネコンにいた時に、自分のデザイン力に少し自信があり、いつか有名なデザイナーになろうと思っていました。しかし、組織の考えと自分の考えが一致しないと、それは実現できません。
また、デザインをお客さんに認められないと実現しません。結局独りよがりになってしまい、お客さんに認められずに、自分はすごいデザイナーだぞと言っていても意味がなく、成功しているとは到底言えません。
僕は転職をきっかけに、自分の目指したい方向と、仲間たちが目指したい方向が一致するかどうかを見定めました。つまり、自分が何を目指しているかを見定めました。
見定めることは、できるできないではなく、するかしないかの話です。なぜなら、それは決めてしまえばいいからです。自分は転職の時に、一生かけてこういうことをしていくと決めました。10年経った今も、その時に決めた道を進んでいます。
決めることによって迷いがなくなり、判断もブレないので、先に繋がるのですが、決めないと、どうしても一歩踏み出すことができません。なので、一生かけて何をするのかをなるべく早く決断することをお勧めします。
――最後に、学生さんへのメッセージがあればお願いいたします。
仕事を選ぶことは、自己実現するために必要であり、思いっきり自己実現に向けて突き進んで行ってほしいです。独りよがりにこれがしたいと言っていても、行動に移していない、口だけ達者、自分のためだけにやっていることが多いです。
チームや組織、仲間のために考えて動ける人になると、遠くに行くことができます。なので、独りよがりもいいですが、仲間と一緒に進むことも考えられる人になってほしいなと思います。
就活で、自分の力を発揮できそうな会社を選ぶ人って多いと思いますが、その会社が目指しているものはなんだろう、その会社が目指しているものは自分の目指したいものなのかを判断することが大事です。そこが一致した時に、幸せに働けると思います。逆にそこが一致していないと、いずれ辞めることになります。
いずれ辞めるくらいなら、最初から会社の目指す先と、自分の目指す先が一致しているところを選ぶべきです。その方がモチベーションも上がり、自己実現をしようとした時にうまく進むことができます。