山積みになったファッション業界の課題
—— 新卒で繊維商社に入社したときから、独立を考えていたとお伺いしました。独立しようと思ったきっかけやできことはありますか。
実は、高校時代からいつか起業したいと思っていました。その時は具体的に何がしたいとかはなく、ただ漠然にそう思っていました。もともと服が好きだったということもあり、高校時代から洋服関係のアルバイトをしていました。
そのアルバイトをきっかけに洋服関係の事業をしたいと考えるようになりました。
−−どのようなきっかけで今の会社を創業しようと思ったのですか?
最初はファッションをライトに楽しむことのできる会社をつくりたいと思っていました。しかし、繊維商社に入社後、ファッション業界には乗り越えなければならない課題が山積みであることに気づきました。そして、この大きな課題を解決するべくウィファブリックを創業しました。
−−具体的にファッション業界における大きな課題とは何でしょうか。
課題の一つとして、「廃棄問題」が挙げられます。競争が激しい中、より低コストで物を売るためには大量に作るしかありません。売られたらまた追加で作ると言うスタイルでは、コストも高くなり、納期に間に合わないなどの問題が発生してしまうため、どうしてもある程度、見込みで作る必要があります。
そして、大量生産で作ったものを完売させることは難しく、ゴミとして廃棄されてしまうのです。
このような「廃棄問題」の解決策には2つの軸があります。1つは、「作りすぎるという過程」を解決することです。そしてもう1つは、「作りすぎたものをどうするか」ということです。
ウィファブリックでは、後者の作りすぎたものを必要としている人に届けるということを軸にしています。廃棄されてしまうものを安く売れば、それを欲しいと思う人はいるのではないか。また、ネットを通じてグローバルにシェアできるようになればものも生きることができ、ファッションにおける貧富の格差を埋めていけるのではないかという思いでウィファブリックを創業しました。
死ぬこと以外はかすり傷
—— 創業するにあたって苦労したことはありますか。
創業した当初は、資金調達に苦労し、資金が底をつきそうに何度もなりました。1日300円で生活していたときもあります。そのときは、商社時代に時間をかけて貯めたお金が一瞬でなくなることに恐怖はありました。しかし、死ぬこと以外はかすり傷と思っていたので平気でした。
−−そのような中で、サプライヤー(納品業者)50社を事前に集めたと伺いました。どのようにして集めたのでしょうか。
商社を中心に100社〜150社を紙切れ一枚持って回りました。世界で忘れられているアパレル会社が数多くあり、そのような業界を変えたいと熱意で交渉しました。
ものづくりをしている人は商品に愛着を持っている人が多いので、ありがたいことに、共感をしてくれる方や協力をしてくれる方がたくさんいました。だからこそ、事前に50社、そしてオープン時には100社弱のサプライヤーを集めることができました。
−−最近新たに「SMASELL(スマセル)」というサイトをリリースしたそうですが、どのようなものなのでしょうか。
大きく言うと、アパレル卸売・仕入れサイトです。在庫を処分したい出品者と特価商品を必要としているバイヤーをオンライン上で、グローバルにマッチングさせるサービスを提供しています。
このサービスを提供することで、「廃棄問題」の解決に貢献していきたいと思っています。
イノベーション的な発想を持った人材
—— 福屋氏が思うファッション業界に求められている人材とは何ですか。
単純にファッションが好きな人も大切ですが、どういう世界を残していきたいかという考え方が大事になってくると思います。どういう社会・環境を自分の子どもたちに残していきたいか深く考えてください。
ファッションとは石油産業の次に環境変化が激しい産業と言われています。きれいな一面だけではなく、反対の面についても理解した上で、さらに自分ならどうしていきたいかというようなイノベーション的な発想を持って、一緒に同じ方向を向いて頑張れる人が求められています。
必ず明るい未来はやってくる
—— 最後に学生へメッセージをお願いします。
一言でいうと、「一生辛いことは続かない。別に就活にこだわる必要もない!」です。
新型コロナウイルスにより、会社が倒産してしまったり、景気が悪くなったりしています。仮にコロナウイルスがずっと流行したとしても、必ず企業側が順応してきます。そのため、悲観する必要は全くありません。
今は状況が悪くても、いつかは必ず良くなるということを前提に自分自身に合った企業を探してください。もしなければ企業である必要もないのです。なぜなら、この先、働き方は変わってくるからです。
副業として複数の会社を持つことや、一つの企業に勤めるのではなく、リモートワークで複数の企業に勤めることだってでき始める世の中にきています。自分たちで新しいサービスを開発することや、学生同士で起業するなど挑戦することが大切です。
新型コロナウイルスの影響で、非常に厳しい状況が続いていると思いますが、これは継続的に続くのではなく、一過性です。
今の世代は、スマホ世代という様々なテクノロジーに対して寛容に受け入れて、自分なりにインプットやアウトプットできる感性を持っています。その感性を持っていることに自信を持ち、新しいアクションを起こしていけば、必ず明るい未来はくると信じています。ぜひ頑張ってください!