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【株式会社地熱開発 大野 友史】「行動には失敗が付き物」リスクマネジメントが成功への鍵となる

2020/06/11

Profile

大野 友史

株式会社地熱開発 代表取締役社長兼COO

兵庫県生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、宇宙開発事業団(現JAXA)に入社して宇宙開発に携わる。その後、現職となる株式会社地熱開発へ入社。入社当初から現在に至るまで、地熱開発の事業を牽引する。今回のインタビューでは、株式会社地熱開発が地域への貢献を最も大切にしながら地熱発電事業の開発を行う企業となるに至った経緯を、大野氏が大事になさっている考えと共に伺った。

地域と共に作り上げる地熱開発

—— まず運営していらっしゃる株式会社地熱開発の事業内容についてお話いただけますでしょうか。

株式会社地熱開発では、地熱発電プロジェクトへの投資や、地域との共同事業において地下資源の探査や掘削管理による資源の確保を行い、発電所を建設しています。既にある温泉の蒸気を活用した発電所の建設もしています。加えて、海外発電機及び各種機器の輸入及び販売も行っています。

当社はGPSSグループに属しています。GPSSグループでは、太陽光・地熱・風力・中小水力・バイオガスの5つの電源で発電事業を手掛けており、持続可能な社会の実現に貢献しているグループ会社として注目を浴びています。現在、グループ全体で外国籍スタッフも働いており、多様な考えを持った人の意見が飛び交い、多角的な視点から課題に取り組むことができる深みのある会社になっています。

私達は、従来の輸入資源に頼らず、純国産のエネルギーで「グリッド・パリティ(※)」を実現することで、安心かつ安定した持続可能エネルギー100%となる社会を目指しています。

※グリッド・パリティ…持続可能エネルギーによる発電コストが、既存の電力のコスト以下になること

――なぜ数ある再生可能エネルギーの中から「地熱」に着目したのですか。

日本は、石油や天然ガスなど資源が乏しい国ですが、地熱資源においては、世界で第3位の地熱資源量を誇っています。しかし、導入設備容量では11位となっており、資源を持っているにもかかわらず活用しきれていないというのが現状です。

その原因の一つが「環境」です。地熱資源量の多い場所は、自然豊かな地域や、観光地となっているところが多く、開発に関して厳しい規制が敷かれています。

豊富な資源を有効活用し、その上で地域の方々に還元できるような仕組みを作ることで、地域の皆様をはじめとする日本国民全体が幸せになる世の中を目指して、「地熱」というエネルギー資源にいきつきました。

理念に基づくことで得られた信頼

—— 事業を立ち上げるにあたって、どのような失敗がありましたか。

創業前から合わせて9か月間の時間を費やし、「地域にある未利用資源を使って、地域のステークホルダーと共にその価値を実現する」という趣旨の企業理念を作り、先ず掲げました。地熱資源とは誰のものかを問い、地域のコモンズと定義しました。地域の資源を、共同事業を介して、純国産エネルギーとそれに基づく経済価値にすることで、自らと社会の利益を同時かつ同じ方向で実現するというものです。

満を持して臨んだはずでしたが、現実はそう甘いものではありませんでした。「地熱開発のブームに乗った良くある拝金主義の一味だ」という噂をたてられ、更に悲しかったのは他業種からの新規参入を良しとしない一部の心無い人達からは「素性の良くない会社」という根拠のまるで無い噂まで流されました。自分達としては使命感を持って挑んだつもりですが、経験も実績もない中で他の業者たちと差別化を図り、新しいビジネスモデルを理解してもらうことは至難の業でした。

しかしそこでくじけるような我々ではありませんでした。理念を胸に、「あくまでも地熱というのは地域の資源であるので、地域の人が一番恩恵を預かるべきです。しかし、地域の方だけでは、地熱開発を一から行うのは難しい側面があります。そこで、専門知識のある我々が開発に携わり、地域の資源を地域の皆様と共に創り上げることで、その地域に貢献できればと考えています」と日本全国行脚で説いて回りました。

次第に私たちの価値観を理解してくれる人も徐々に増え、共同事業が理解されるようになり開発の案件も増えるようになりました。我が社と共に事業をしていこうと周囲の方々が思ってくださったのは、やはり理念に基づく信頼とそれを可能にする具体的な仕組みがあったからだと思います。

――失敗からどのようなことを学びましたか。

何か行動を起こせば、そこに失敗はついてくると思います。そこで重要となるのがリスクマネジメントです。元々私は、一度決めたことは前のめりに突き進んでしまうタイプの人間なのですが、地熱事業から多くを学び、広い大局的視野で見ることで、目的は何で、リスクは、リワードは何なのかを考えて行動するようになりました。それよってリスクの発生を未然に防ぐことができ、結果的にリスクを管理することが可能になりました。

――リスクを避けながらリワードを得ることは不可能なのでしょうか。

それが出来れば一番良いのですが、現実はノーリスク・ノーゲインで、リスクを取らないことには何事も始まりません。リスク自体を消すことは出来ませんが、どのリスクを取って取らないかは選ぶことが出来ます。理念を満足し、リワードを最大にするようなリスクの取り方がベストです。我が社が絶対に取らないリスクは「地域の信頼を失う」リスクです。お金の損益も確かに重要ですが、地熱事業を通じて、直接的間接的に地域のニーズや抱える問題が解決されるように事業を進めていくことを軸にしています。地域と地域のステークホルダーが事業の根本です。地域との信頼をリスクにさらさないよう、数年かけて地域との対話を行い、地域のステークホルダーの合意を経て共同事業を組成しています。

悔いの残らないように挑む

—— 最後に、学生へのメッセージをお願いします。

行動をすれば失敗は付き物だと思います。学生時代からリスクマネジメントの習慣をつけることに損はないです。しかし、経営者であれば深堀してリスクマネジメントを考える必要がありますが、学生の皆さんにはそこまで深く考え込む必要はありません。

例えば、就職活動の中では失うことは少ないと思います。基本的にはプラスになることが多いのではないでしょうか。面接でうまくいかなくてもそれ以上のリスクはないですし、逆に何も行動しないことのほうが得ることがないという点でリスクです。

この考え方は学生時代から持っていました。20数年前に皆さんと同じように就職活動に励んでいた時期に、50社も60社も入社試験に挑んでおり、リスクを考えずに行動していました。様々な業種の人の話を聞いていく中で、理解を深めることもできましたし、その時の経験が今にも生きています。

新卒就活は一生に一度のため、やるだけやったほうが後悔はないと思われますし、多くの人の話を聞けるので、その後の人生にもプラスに働きます。会社に入ってからの合う、合わないはあると思いますが、とにかく新卒の就活はやりきることが大切です。

リスクマネジメントの習慣づけは大切ですが、学生時代は、リスクはほとんどなくリワードのほうが大きいです。そのためリスクを考えすぎずにチャレンジを続けることが学生には大切になると思います。

人生において大切な時期であるので、いろいろな人の意見を聞き行動してチャレンジすることが大切です。なぜかというと、リスクとリワードを考えると、圧倒的にリワードのほうが大きいからです。地道にチャレンジし、情熱を持って取り組んだ過程が就職後、仕事をしていく上で壁にぶつかった際の支えとなります。悔いの残らないように、今できることを考え尽くして就職活動に挑みましょう。

GPSSグループ

設立 2012年10月
資本金
売上高 非公開
従業員数 185名(グループ従業員数)
事業内容 持続可能エネルギー開発及び投資事業 投資家向けデューデリジェンスサービス 大規模IPP向け発電モニタリングサービス
URL https://gpssgroup.jp/ https://www.chinetsu.com/
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