起業するなら若いうちに!
—— 起業されたきっかけは何だったのでしょうか。
高校生の時、両親が勤めていた会社が倒産しました。正しい努力をして生きてきたにも関わらず会社の倒産(アンコントローラブルな要因)によって明るい人生が地獄に一変した周囲の関係者の姿をみて、自分の人生は自分でコントロールしたいと思うようになりました。その時から経営者を目指すようになりました。
大学では、理系の経営者の育成を目指す学科に入学しました。インターンをしていた企業では飛び込みでホームページの営業をしたりテレアポをとったりして、営業の仕方を学んでいました。ベンチャー企業だったので経営陣の働く姿を近くで見ることもできました。
しかし、いざ起業をしようとなると何のアイデアもなく、怖いという思いが浮かびました。そこでとりあえず一度社会に出てみようと思い、幅広い知識を学ぶことのできる商社に入社しました。
―――――商社ではどのような仕事をされていたのですか。
商社での最初の2年はリスク管理の仕事をしていました。買収先の会社の審査を行ったり、仕入れ先がちゃんとした会社なのか決算書をみて判断したり、1年目からかなり難しい仕事をしていました。2年目のとき、アメリカの公認会計士の資格を取りました。仕事と勉強をひたすら繰り返し、土日は毎日13時間勉強していました。
公認会計士の資格を取った理由は3つあります。まず1つ目は起業することから逆算して考えると、経営的知識が欲しかったことです。2つ目は若くして起業するので、周りからなめられないためにも箔が欲しかったことです。3つ目は最悪失敗したときに助けになると思ったからです。様々なことを考慮した結果、一番コスパよくとれると考えたのがこの資格でした。
アメリカの資格と聞くと難しそうに感じるかもしれません。確かに問題は全て英語で書かれていますが、内容は日本の会計士資格と比べると易しくなっています。英語といわれただけでハードルが高くみえますが、実は思っているよりも簡単なのです。
3年目には、空港の部署に異動になりました。その時の上司がとても厳しく、鍛えられました。パラオに一人で行って政府の人と交渉を行ったり、大統領セレモニーのために1か月ほど滞在したりしたこともありました。パラオではアメリカの法律や会計基準が用いられていて、そこでかなり公認会計士の資格を活かすことができました。
3年目にしては大きな仕事を任せられ、海外赴任の話も決まっていたのですが、リスクを伴って起業するなら絶対に若いうちがいいと考えていました。2年も経ってしまうと起業するのが難しくなると思い、3年で会社を辞めました。
会社を辞めるときは、かなり反対はされました。特に家族には起業なんて絶対やめた方がいいと強く言われました。会社でも商社から転職する人は多くても起業する人は少なく、先輩に最初は反対されました。しかし、自分のやりたいことや想いを話すと最後にはみんな応援してくれました。
インフラで人々の暮らしを豊かに
—— 実際に起業するまでの経緯を教えてください。
社会人2年目のはじめから、大学の同級生だった友人とルームシェアを始めました。一緒に暮らし始める前からこの人と起業するのだろうなとなんとなく感じていました。それから毎日構想を話し合っていく中で、お互いに強み弱みを補うことのできる良いパートナーであることを再確認し、二人で起業することにしました。その友人が現在の共同経営者である秋山氏です。
現在の弊社のミッションは「次世代のインフラを創る」ですが、原体験は商社時代にありました。インフラは人々にとってなくてはならないものです。商社での仕事を通して、インフラを整備することで人々の暮らしが豊かになる世界をずっと見てきました。私たちの会社でも、ITサービスを通じてなくてはならないサービスを生み出し、社会を良くしたいという想いがありました。
現在は、主にビジネスマンに特化したグルメ予約サービス事業“Leretto”や、Google Mapを活用した集客事業等を行っています。特に、Lerettoは思い入れのあるサービスです。商社に勤めていたころにずっと欲しいと思っていたものでした。
2人だから乗り越えられた、倒産の危機
—— 起業されてからの苦労はありますか。
起業から3か月で倒産しそうになりました。資本金100万円ではじめたにも関わらず、稼げるだろうと思い40万円払って上場塾に入りました。しかし実際にはまったく儲からず、アルバイトをしたり私物をフリマアプリで売って資金に充てたりもしました。二人で飛び込み営業やテレアポをして周り、ゆっくり寝ることもままならない状態でした。その後店舗の集客支援に関するコンサル事業を始めたことで収益をあげ、初年度を黒字で終えることができました。
そのとき、起業は見切り発車で始めるのではなく、資金などもちゃんと持った状態で計画をしっかり立ててした方がいいと思いました。私たちが潰れずに残ったことは奇跡の連続でした。もしあの時コンサル事業が見つかっていなければ今頃どうなっていただろうと考えるとぞっとします。
苦しい状況になったとき、共同経営者である秋山氏がいるということが大きな支えになりました。1人で新しいことを始めるのは心細いですが、2人ならもしうまくいかなかったとしても2人だからなんとかなると思うことができました。また、公認会計士の資格をもっていたということにも助けられました。たとえ事業がだめになったとしても、この資格があればどこかで仕事ができるだろうと前向きに考えることができました。
―――――学生の皆さんにアドバイスをお願いします。
大学時代は、とにかくいろんなことに挑戦するほうがいいと思います。おそらくほとんどの人が、よくわからないままなんとなく大学に入学します。大学に勉強をするという目的をもって入る人は少ないです。しかし大学を出ると、多くの人が学問と切り離された社会で生きることになります。そうなったときに、自分が何をしたいのか、どういうスキルを身に着けたいのか、意思がなければ何も動けません。
そのために、勉強以外のいろんなことにチャレンジすることも大切です。それはなんでもいいと思います。留学でもいいし、起業でもいいし、インターンでもいいです。できればみんながやらないことをやって差別化するほうがいいです。いろんな経験を積んで多くのものをつかんで欲しいです。大学生のうちに本当にやりたいことを見つけられた人は勝ちだと思います。とにかく、大量行動を意識して、夢を見つけてください!