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「どうせやるなら楽しい方を」IT×音楽サービス誕生の背景とは

2020/05/22

Profile

野田 威一郎

Wano 株式会社 代表

香港で中学・高校時代を過ごし、慶応義塾大学へ入学。卒業後は株式会社アドウェイズに入社し、その後2008年に独立しWano株式会社を設立。「日本のエンターテイメント文化をITの技術を駆使して世界に広げていく」ことを軸に、音楽・映像×ITサービスを次々と展開する。2012年には、誰でも自分の曲を世界185か国以上の配信ストアで配信販売できるアーティスト向けの音楽流通サービス、「TuneCore Japan」を開始。有名なアーティストからインディーズのアーティストまで、ジャンルを問わず幅広く利用され、2019年4月時点で総額55億円をアーティスト・レーベルに還元。また、現在は楽曲だけでなく動画も配信するサービス「Video Kicks」をスタートさせている。 “日本から世界へ独創的なプロダクトとサービスを創る”ことをテーマに画期的なサービスを展開する野田氏に、サービス開始に至るまでの経緯や苦悩を聞いた。

やりたいことから逆算し、積んできた経験の数々

—— まずは今の事業内容について教えていただけますでしょうか。

主として取り組んでいるサービスは「Video Kicks」です。映像作品を作成するクリエイター向けのサービスです。具体的には、インディペンデントの映像クリエイターが自身の作品を、いろいろな有料プラットフォームで配信できるようにしていきます。現在は、音楽アーティストが創ったミュージックビデオやライブ動画を、iTunesやApple Music、Line Music、GYAO!などに配信できます。

また2012年から、アーティスト向けの音楽流通サービス「TuneCore Japan」を開始し、国内外の音楽配信プラットフォームへの楽曲配信・管理を一括で行うことができるツールとして、多くのアーティストやレーベルに利用いただいています。

やりたいことから逆算して選ぶ道

—— 事業を始めるまではどのような経験を積まれたのでしょうか。

学生時代は音楽が好きだったこともあり、渋谷のクラブで働いていました。並行して自分で印刷代理業やデザイン業、イベント開催などフリーで活動していました。無名の学生デザイナーだったので、印刷代を安くすることを売りとしてデザイン依頼を増やそうとしたら、印刷代理事業の方が儲かりました。今思えば学生の時は調子に乗って色々やっていましたね。

 

そして大学3年のときに、ある大規模イベントの印刷物をすべて請け負うことになりました。印刷代はイベント後の支払いでしたので、先に自費で何万部と印刷したのですが、イベント後依頼主からお金が払われないという事態が発生したのです。数百万でしたが、当時学生で、2回も留年していたため。。。これに学費がのっかって、一気に過去の収益などすべてが無くなりました。この事業を失敗したことをきっかけに社会のことをもっと知らなければならないと思いました。

 

それから就職を考えるようになり、学校も行きました。なるべく権限を与えてくれそうで、勢いのある会社、さらに自分の好きなジャンルという条件で企業を調べました。そして2004年に、当時社員20人くらいだったアドウェイズに入社を決めました。上場も経験したアドウェイズでの激動の4年間は本当に楽しかったです。

 

――そこから起業に進んだのはどういった経緯でしょうか。

 

もともと事業を失敗していたので、再チャレンジを30歳までにはしたいなと考えていました。アドウェイズが上場してこれからというタイミングでしたが、どうしてもエンタメのサービスをやりたいという気持ちが強くなりました。それで28歳のころに、起業することを決め、アドウェイズを辞めさせてもらったのです。

 

当時は音楽聞き放題サービスも無かったですし、まだ多くの人はガラケーを使っていて、着信音で音楽を聴いていました。ただ、音楽業界はもっとIT化を進めれば、良くできると感じていたのです。日本のクリエイターたちが世界に飛び出して成功する手伝いができればと思いました。その橋渡しのような会社を作りたいなと考え、創立したのがWanoです。

「どうせやるなら楽しい方がいい」

—— 好きなことを選択していく。野田さんのお話から、そういった明るい印象を受けます。

僕の人生の選択肢は基本そうだと思います。飽き性なので、楽しくないと続きません。バイトに関してもそうです。学生時代のバイトは生活費や遊ぶお金の源なので、なにをしてもある程度時給は入ってきますが、どうせ自分の時間を使うなら、自分がやりたいこと、なりたい自分に近いことをした方が、お金も入ってきて、さらに楽しいと思うのです。どうせやるなら、楽しそうな方を。そういう軸でこれまで選択してきました。

 

自分が学生の頃から楽しそうだなと思っていたフィールドが、エンターテイメントとITです。実際に今、その両方に関わって働いていますが、自分が楽しそうだなを求めた結果が起業だったのです。

 

――起業してからは、失敗や苦しい経験はありましたか?

 

2008年に起業当初から今まで、どこからも出資を受けず経営しているので、資金的には起業時が一番苦労したかと思います。そもそも会社の規模を追求して、上場させてといった意思は特に無く、それよりもエンターテイメントの領域で良いプロダクト・サービスをつくりたいという気持ちの方が強かったです。とはいえ、新規サービスを作るにはお金が必要ですので、それを両立させることがやはり大変だったなと思います。さらに、数々のサービスを作っては、失敗してというのも繰り返しましたね。

 

――その苦しい時期を乗り越え、今のサービスが誕生したのですね。

 

ガラケーからスマホに移行していた時代であり、閉ざされたガラケーの市場から、誰でも参加できるオープンなスマホ市場に変化していきました。なんとなく、そんなことが音楽でも起こると思っていたのですが、新規サービスを考える過程で、知合いのアーティストなどにヒアリングしたり、海外事情を調べたりしてたどり着いたのが、TuneCoreというディストリビューションサービスであり、会社でした。

 

最初は自社でサービスを創ろうと思い動き始めたのですが、様々な事情で米国に交渉にいき、TuneCoreとWanoでジョイントベンチャーとして会社を設立し、サービスを展開することになりました。起業3年目の日本ですら無名の会社が、海外の会社とジョイント・ベンチャーをつくるという事態です。英語の契約や投資金の準備など、本当に初めての事だらけで、結構大変でした。結局交渉から設立までには1年間かかり、やっと会社「TuneCore Japan」を立ち上げたのは2012年です。

始める「タイミング」の重要さ

—— 起業してからいくつものサービスを生み出してきた経験を通して、学んだことはありますか。

何か新しいサービスを生み出すときは、その始めるタイミングを見極めることが重要だと思いました。誰もがアイデアやプロダクトはよいと思って制作しますが、失敗するプロダクトはたくさんあります。それは、タイミングが時代に当てはまらなかったからということが、かなり影響する気がしています。もちろん、失敗する要因はそれだけではないとは思いますが。

 

プロダクトを始めるタイミングには、早すぎる、遅すぎるがあり、そのタイミングを見極める方が、新しいサービス内容自体を考えるより、個人的には難しい気がしています。やりたいことを思いついて、詳細を考えて計画を立てるということまでなら、世界中で結構な数の人が同じ内容で同じところまでたどり着くでしょう。そして、それを実際に具現化し形にできる人はその中でもかなり数が減ります、よく言う行動に移す人です。さらにその行動を良きタイミングで行う人は、ほとんどいなくて、その市場やマーケットで数人、ないしは数社ということになります。プロダクト自体が良いのは前提ですが、そのタイミングが合致したものが、継続的にサービスが使われるようになるのかなと思います。

 

「TuneCore」は世界でも音楽ディストリビューションのパイオニアであり、日本でもそうだと自負しているのと、現状当社調べではありますが、日本では利用アーティスト数も流通曲数も一位です。これもまたタイミングが良かったなと思っています。そして今後着目するのは、動画や映像コンテンツなので「Video Kicks」をはじめました。音楽と映像は表裏一体です。音楽のない映像はイマイチで、映像のある音楽はバズりやすいです。

正直な気持ちを大切に|自分はどこにいきたいかを考える

—— 最後に、学生へのメッセージをお願いします。

学生に伝えるのに、学生より子供っぽい表現ですが、身近な些細なことでも良いので、「ワクワク・ドキドキすることをやろう」ということです。普段自分がワクワク・ドキドキする気持ちを大切にし、自分がワクワクしているのか?ときにはドキドキしているのか?なんかを自問自答しながら進んで行って欲しいです。

 

すでにそういった気持ちをもてる何かを見つけている人はラッキーですし、仮に具体的に何をしたらよいかわからないとしても、自分がワクワクしたり、ドキドキしたりすることの方を随時選択していけば良いのではないでしょうか。

 

「ワクワク・ドキドキすること」が本当に好きなことかどうかは本人にしか分かりませんし、そうなることは人それぞれだと思います。好きだと思っていたけれど、続けているとワクワクしなくなるということも多々あります。そうしたら、ワクワクする方に方向転換したって良いと思いますし、ワクワクするように変化させるでも良いと思います。ドキドキすることは、人によっては必ずしもプラスではないかもしれません。けれどそのドキドキは、生活にハリや刺激をあたえ、成長の糧になると思います。

 

結局は自分がどこにいきたいかということなので、壮大で明確なビジョンがなくとも、自分に正直な気持ちを大切に、自分が「ワクワク・ドキドキする」方向かそうでないかの、どちらか2択の繰り返しで良いのではないかと思います。

Wano株式会社

設立 2008年4月
資本金 8000万円(2020年5月現在)
売上高 非公開
従業員数 非公開
事業内容 エンタメ関連サービスの新規企画開発 オンライン音楽流通 デジタル動画マーケティング ITプロダクトの開発・運用 映画の企画・制作/映像制作 ファッションメディア/SNSマーケティング
URL https://wano.co.jp
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