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【ジークラウド株式会社 渡部 薫】「起業」とは今の自分では登れない山を目指すこと

2020/04/25

Profile

渡部 薫

ジークラウド株式会社 創業者兼CEO

インターネット黎明期よりインターネット事業に携わり、ベンチャー企業の立ち上げ、経営、ビジネス開発、事業戦略を担当。ソフトバンクグループで動画検索エンジンの開発、 モバイル検索エンジンの開発、ボーダフォン買収案件に関わる。SBIグループでは、インターネット金融の新規事業、ビジネス開発、ウェブ事業戦略を担当し、金融向け検索エンジンの企画開発およびビジネスSNSサービスの企画、設計、開発で主導的な役割を担った。また、アメリカ航空宇宙局NASAのエンジニアとの共同開発や、2008年にマイクロソフトに2000億円で買収されたノルウェーのFAST社とジョイント・ベンチャーを設立したり海外企業との取り組みも行う。2009年よりクラウドコンピューティングとiPhone向け事業 - RainbowApps を立ち上げ、iPhoneアプリ開発支援サービスを提供する。現在はウェブビジネスのコンサルタントとして、様々な企業のウェブ戦略のアドバイスをする一方、講演、イベント、セミナー、スクールなどソーシャル活動も活発に行っている。2010年にはソフトバンク孫正義社長が提唱する新30年ビジョンの策定委員会メンバーとして参加し、プレゼンテーション制作に貢献した。そんな10年先の未来を先読みしたソフトウェア開発を行う渡部薫氏に起業の厳しさを伺った。

10年単位くらいでビジョンや未来の先読みをしてソフトウェア開発をする

—— 事業の内容についてお聞かせください。

ソフトウェア開発事業です。開発をどの領域でやっているかというと、インターネット上でコンシューマー向けのソフトウェア開発をやってます。

どのようなソフトウェアを開発するのかは、その時々の流行やトレンドのような経済環境で変化します。

その見極めをするのが私の役割です。

――事業を始めた経緯などを教えてください。

今は自分のパソコンにデータを保存しなくても、クラウドというサーバーに預けられます。それをクラウドコンピューティングといいます。

昔は、基本的に自分の写真や動画のデータは自分のハードディスクに保存していました。

わかりやすいものでいうと、YouTubeです。YouTube内で見ることのできる動画は全てYouTubeの中にあるじゃないですか?大きな定義でいうとそれをクラウドコンピューティングといいます。

では、なぜそんなことができるようになったかというと、12年前に通信速度が速くなったからです。

そのときに、世の中でクラウドコンピューティングが使用されるようになるだろうと考えました。そして、今の会社の「ジークラウド株式会社」を2009年に新しく作り直しました。

当時私は、検索エンジンの開発を専門としておりソフトバンクグループで対Googleの事業をしていました。そこで、「Googleがクラウドコンピューティングのビジネスをするとしたら」と考えました。もし、Googleがクラウドコンピューティングやるのだったら「G cloudという名前にするのではないか?なら、先に商標取っておけばGoogleが買ってくれるのではないか?」と思ったからです。

まぁ、まだちょっと声がかかってないんですけど。

ちなみにAppleのものはiCloudと言います。なので、10何年前に会社名を「アイクラウド」にしておけば会社名をAppleが買ってくれたかもしれませんね。

そのように、大体10年単位でビジョンや未来の先読みをしてソフトウェア開発をしています。

厳しく困難な道を選ぶことが起業

—— 起業するときに困難だったことがあればお聞かせください。

みんな起業というものを甘く考えていますが、起業そのものがすごく困難なのです。

まず、「心構え」が重要です。

起業を登山に例えると、「富士山だったら登れるかもしれない」と思います。しかし、「エベレスト登りますか?」と聞かれると、今のままでは絶対無理とわかると思います。

起業するときにも、今の自分の実力、もしくは自分のチームや仲間の実力を冷静に判断して、事業難易度というものが設定できます。そこで今の実力で達成できる設定をして目指す事は、私からすると起業ではないのです。

起業するときは、今の自分の実力より1.5倍くらい上の目標を立て、「登れるかどうかわからないけれども、3年から5年訓練をして自分が成長すれば登りきれるぞ!」という目標を設定しなければなりません。ですので、目標を達成するまでの過程が大変なのです。

――具体的にどのようなことが大変でしたか?

基本的に全部が大変です。初めは何もない状態からスタートするので、支援してくれる人もいません。ゲームで例えるとドラゴンクエストみたいなロールプレイングゲームのようなものです。ゼロからスタートするので足りないものを全て自分で集めて行かなくてはなりません。ですので、基本的には全部大変なのです。

大変なのですが、その大変を楽しめるかどうかが重要です。自分で選んだことなので、それ自体を怖いと思うのではなく、楽しめばいいのです。それで、わからないことがあれば「わかりません!」とインターネットを使い、正直に助けを求めればいいのです。とにかくみんなに「こういうこと知りませんか?」「助けてくれませんか?」と言い続けることで、時々誰かが助けになる人を紹介してくれます。

私は、いつもそうしていました。

自分が失敗と思うかどうか

—— 渡部様は今まで失敗したことはないという情報を拝見したのですが。

失敗は沢山しています。ただ、失敗というものには定義があります。

第三者が失敗と思うのか、それとも自分自身が失敗と思うのか。ということです。自分自身が失敗と思わなければ別に失敗ではないのです。

それは、失敗ではなくて「教訓」なのです。

私たちは、3月末にコロナウイルスの影響を考えて観光業から撤退しました。しかし、それも辞めただけであって、失敗とは思っていません。

恋愛関係でも同じことが言えます。自分で彼氏を振り、友達からは「恋愛で失敗したね」と言われたとします。しかし、他人からは失敗に見えたのかもしれませんが、自分は新しい道に進んでいるだけと思えば、それは失敗ではなくなります。何事も自分次第なのです。

失敗や間違いを起こさないと正しい道は見つけられません。正しい道を見つけるために失敗を繰り返すのです。ですので、私はそれを失敗だとは思いません。

――今回の観光業の対応についても決断が早かったと感じるのですが、なぜそんなにもすぐに決断できるのですか?

それは10年、20年と毎日、正確に沢山の情報を集めて決断する訓練をしてきたからです。

例えば、交差点で信号待ちをするときに、私は必ずどの方向から車が飛び込んでくるのかをパッと一瞬で確認します。そして、どこから車が突っ込んできたら危険なのかを判断し、どこに自分の注意を向け、どこに立つべきなのか決断する。そのようなことを日々訓練しています。

3月末に、コロナウイルスの影響を考えて観光業から撤退することを決断したのは、3月末に観光業を切らないと、交差点での訓練のように安全地帯に行けないと判断したからです。コロナウイルスは、12月に中国で発生して、1月に日本でも話題になりました。私は、このコロナウイルスが日本にやって来ると考えました。そして、時期としては3月の中旬から下旬には来るだろうと思い、デッドラインとなる3月末に撤退しなくてはいけないと、逆算的に判断しました。

常に謙虚に勉強しなくてはいけない

—— もしも渡部様が今、就活生だとしたらどのような行動をしますか?

僕は就活をしなかったのでなんとも言えませんが、やはり、常に謙虚に勉強をすると思います。年下だから、もう引退した人だからというのではなく、自分の知らないことを教えてくれる人には敬意を示して、常に謙虚に勉強することが大切なことだと思います。

自分で決めるということを癖づける

—— 今の若者へメッセージをお願いします。

「自分で決める」という癖をつけておけば、必ず役に立つということです。

毎日「自分で決める」という訓練や練習をしてください。もちろん、人の意見を聞くことは必要ですが、本当に心から自分が「そう!」と思えるかということ。それをとにかく小さなことでもいいのでやってみてください。

他人が言ってくれることを単にうざいと思わずに、どうしてそのようなことを言ってくれるんだろう?と一歩引いて考えてみて、自分のためになると思うのであれば「あぁ、なるほどですね」と言えばいいですし、本当にうざいのであれば「ちょっとそれうざいです」とはっきり言えばいいです。

ただ、大切なことは自分で決めることです。親に言われたから、彼女に言われたから、彼氏に言われたから、上司に言われたからというのではなく、なるべく自分で決めてください。必ず役に立ちますよ。

ジークラウド株式会社

設立 2009年8月
資本金 2億900万円(資本準備金を含む)(2020年4月現在)
売上高 非公開
従業員数 非公開
事業内容 シェアリングサービス事業、システム開発/コンサルティング事業、RainbowApps事業及びドローン/サイバーセキュリティ事業
URL https://gcloud.co.jp/
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