IT企業なのに紙でのやりとりに違和感…「AxelaNote」誕生のきっかけ
—— 今や様々な場面で活用されている「AxelaNote」を開発しようと考えたきっかけは何だったのでしょうか。
20年前、日立製作所に新卒で入社しました。入社したばかりの私は、上司に資料を提出し確認をしてもらっていました。上司から添削された資料はいつも赤文字たっぷりで返ってくるのです。そのときに、「IT企業なのに紙でやりとりすること」を不思議に思い、違和感を覚えるようになりました。そこで、電子上で紙を使わなくてもいいようなサービスを作ることができないだろうかと思い始めたのです。
それからマイクロソフトや丸紅情報システムズに入って、官公庁や金融系の仕事をしました。そこでも、ペーパーレス化が進んでいないことが判明したのです。そのときに改めて、印刷禁止・注釈禁止のPDFに、表示を崩さずに書き加えることができるソフトがこの世にあれば便利だと思いました。世の中に目を向けたところ、求めているソフトは誕生していなかったので、それなら自分で作ろうと思ったのです。そして「AxelaNote」の開発に取り掛かり始めました。
経験の積み重ねが活きる。成功に至るまでの失敗の数々。
—— これまでの人生で逆境経験はありましたか?
あるプロジェクトに参加した際、プロジェクトマネージャーとして50~100人規模のチームを仕切っていました。そのプロジェクトは常に切羽詰まった状態であり、納期が近づいているけれど、モノはできていない、人をいくら集めても足らない、そしてお客様からの指摘が収束しなくなったのです。最終的にはプロジェクトが破綻しかけました。
この状況をどうにか打破しようと思い、とにかく情報の交通整理を徹底して行いました。例えば、お客様からある要望が来たときに、プロジェクトチーム全体で話し合って、ここは改善できるけどここは妥協すべきだよね。というように、自分たちができることとできないことを明確にしました。
できないことを引き受けたとしても良いモノは作り出せないので、断るのは仕方のないことです。お客様にも「それは出来ません。」とはっきり伝えました。
そうしないと、確実に品質を下げてしまうからです。その判断の甘さが結果的に、大きな障害を起こしてしまう可能性もあります。当時の自分たちの現状に合わせて、これは次期開発に回そう、と取捨選択をしたのです。その結果、プロジェクト全体で上手く調整がつき混乱の事態は終息しました。
――学生時代や現職に至るまでの社会人経験で苦しい場面はありましたか?
学生時代に苦しかった経験をしたのは、ゲーム機のプレイステーションのプログラマーとして仕事をしていたときです。業務の中でどうしても改善できないバグがあったり、どうしても正解が分からず、いくらいじっても答えにたどり着かなかったりと、上手くいかず行き詰った時期がありました。
その時は、とにかく周囲の人からアドバイスをもらい、実践することを繰り返し諦めずに取り組み続け、なんとかやり遂げることができたのです。
また、社会人になってからは1年目が本当に大変でした。1年目の残業が322.5時間だったので、死ぬかと思ったほどです。そのときに救ってくれたのは、当時の上司です。私のことを心配してくださり、なんとかしてやると手を差し伸べてくださいました。その人のおかげで乗り越えられたと言っても過言ではありません。
学生時代から今までの苦しかった経験を通して言えるのは、逆境を乗り越えるパターンは確立されたものではなく、人や環境、年月によりけりだということです。
ケースバイケースで、決して正しい乗り越え方はないのです。
「好き」だから続けられた。18年間ずっと探してきたソフトの開発
—— 「AxelaNote」開発にあたって大変だったことは何ですか?
「AxelaNote」は、私が18年間ずっと探してきて見つからなかったソフトです。当然今まで出てこなかったのはそれなりの理由があったからだと思います。実際に開発に取り組むと、技術的な面でやはり難しかったです。
アクロバットリーダーの上に半透明のレイヤーを重ね、そのレイヤーが拡大縮小しても、スクロールしてもちゃんと連動させる。しかも、アクロバットリーダー側には一切改造はしない。その機能を実現させるのが想像以上に難しく苦労しました。だから今までこのソフトが無かったのだと、18年間出てこなかった理由がよく分かりました。
それでも開発を続けられたのは、単純に「好き」だからです。そういうソフトを考えることが好きで、更にみんなが困っているのでニーズがあるのは分かっていました。絶対に求められているモノだと確信できていて、自分自身も作りたいという思いがあるから続けられたのだと思います。好きではなくて、ただしょうがなくやっているのであれば全然続かなかったと思います。
――これまでの苦境を乗り越えた経験から学んだことはありますか?
「備えあれば憂いなし」ということです。フランスの細菌学者ルイ・パスツールが述べた通り、チャンスは備えあるものに来ます。突然そういうものが来たときに、何も備えていない人がすぐに何とかするのは無理な話です。ですので、日ごろからチャンスがいつ訪れてもいいように準備をしておくことが大切だと実感しています。
また、大学生、社会人を通して苦境を乗り越えた経験があることが、自信にも繋がっています。「あのときも乗り越えられたんだから、今回もなんとかなる」そう思えるのです。無駄な経験はありません。経験の積み重ねは必ず活きるものだと思っています。
“視野を広げること”と“諦めないこと”が大事
—— 学生時代にも様々な経験を積んできた小林さんから、学生へのアドバイスをお願いします。
「人生は諦めないで最後までやった人が勝てる」という言葉があります。確かにその言葉は正しいけれど、それを完全に信じるのはまずいです。生き残った人の意見を聞けば上手くいくに決まっているだろうと考える“生存バイアス”というものがあります。成功した人物、企業や戦略のみに注目し、失敗したものに目を向けない行為です。
例えば、あなたがコーヒーを販売しているとします。そのコーヒーのマーケティングをするときに、購入した人に意見を求めるだけでなく、それよりも購入しなかった人の意見をもらわないといけないのです。しかし、そういう人達の声は簡単には拾えません。そのため、簡単に拾いやすく、かつ都合の良い声だけ信じてしまうことになります。
成功した人の話ばかりを聞くと、「ああ、それをやればいいんだ」と思ってしまいますが、そういう訳ではないということを忘れないでください。成功できなかった人、生き残らなかった人の話をしっかり聞いてください。
そして、成功するか成功しないかという話以前に、諦めないことが何より大事です。諦めてしまったら、生き残る、生き残れないという選択肢すらありません。生き残る可能性も生まれないのです。
――最後に、就活生に向けてメッセージをお願いします。
私が就活をしていた当時、世の中は就職氷河期でした。大学は2回浪人して1年留年。しかも東大や早稲田大学卒業ではありません。そのような条件のなかでも、20社受けて12社が最終面接まで進み、内定は6社いただきました。そのときの状況や条件に関わらず、やり方さえ間違えなければ、就活は上手くいくのです。
視点を横にずらしたり縦に移動させたり、鳥の目で俯瞰するような見方をしてやり方を変えていけば、決してエリートのような条件ではなくても、ちゃんと就職はできると思います。
就活が上手くいかない人は、見る範囲が狭いだけです。小手先のテクニックとかESをどうするかとかではなくて、もっと大きな視点で見るべきです。何度も言いますが、就活はやり方を間違えなければエリートみたいな条件がなくても成功します。
例えば、学歴も良くて頭もいい優等生が自分と合わない業種を志望していて、上手くアピールできずにいるケースは多いでしょう。そういう人は、イメージと現実のギャップをなかなか見極められていないのではないかと思います。
出会った学生の中でも、もっと視野を広げて活動した方が実りになるだろう、と感じる人が結構います。学生にはぜひ、狭い世界を見ずに視野を広げて考えてみること、そして何より簡単に諦めないことを肝に銘じて様々なことに挑戦していただきたいです。
失敗した経験は必ずその後の人生で活きる場面があります。何事も失敗を恐れず、頑張ってください。
最後に、「AxelaNote」についてですが、2020年4月8日に電波新聞の週刊アスキー IT Leadersに掲載されました。今キャンペーンを実施していまして、「AxelaNote」を契約してくださった方先着100名に、ES(エントリーシート)を1回無料でみさせていただきます。学生の人で興味を持っていただければ、ぜひ購入していただきたいと思います