日常の「めんどくさい」を無くしたい
—— この事業を始めたきっかけを教えて下さい。
事業は、スモールビジネスなどを運営されている店舗様が簡単に導入、使用できる予約システムを提供しております。例えば集客や業務管理、決済などの、業務を効率化できるような仕組みを提供しています。現在、約八万以上の事業者さんに使って頂いている状況です。
そもそも何故始めたかというと、私自身が予約システムにこだわりがあった訳ではありません。自分自身が1顧客として、例えば飲食店の予約をする時、電話で毎回予約するのが “めんどくさい” と感じ、それを全部ネット予約でスマホで一発でできれば便利だと思ったからです。
それを可能にするためには、まずは店舗様側にそういう手段がないといけません。そこで事業として予約システムを提供しようという流れでした。弊社の会社のミッションは、『めんどくさいを無くす』というシンプルなものです。それは僕が面倒臭がり屋だからなんですが(笑)。
ビジネス上でのめんどくさいこととは、お客さんの対応との噛み違い、雑務や電話対応での時間調整、お金の管理、集客等、沢山あります。その中で、例えば、集客という面では、Google とパートナーシップを組むことで、Google から直接予約できる形にするといったサービスの提供があります。
ビジネスオーナーとお客、双方が楽になれるサービスを
—— 今後予約という切り口以外でもめんどくさいを無くしていくつもりですか?
まさにそうです。予約に限らずやっています。事業者側のめんどくさいというのは先ほど述べたような事柄が主になってきます。それを全部解決していくのが、我々の視点です。更にこれらが楽になると、究極的にはお客さんにとっても楽になると思っています。
例えば、予約時にお互いのこともわかるので、美容院に行った時、「前はどういう髪型でしたっけ?」みたいな話もしなくて済みます。双方にとってめんどくさいを無くして、色んなことがスムーズになればと思っています。
『唐突なタイミング』は経験が後押しした
—— 起業する以前のことを教えて下さい。
大学生のときは、僕自身は起業家になりたいとは思っておらず、大学に残って研究しようと思っていました。ただ、その時にGoogleが初めて日本で採用をし始めたんです。当時は日本ではあまり知られていませんでしたが、海外でかなり注目されていたので興味が湧いて応募し、就職する事が出来ました。
Googleは海外に本社があり、必然的に海外の方と仕事をすることが多かったです。そこでは、自分と同じ年齢で起業して上手くいっている人もいれば、上手くいかなくてもまた立ち上げて軌道に乗せていく人がたくさんいました。
そういう人達をを見ていたのがきっかけになったと思います。
その時は海外にもかなり行っていたので、勘違いの部分も大きいとは思いますが、実際に近くで彼らを見ていて、起業へのハードルがかなり低くなったのが大きいです。
皆がやっていたので自分にも出来るんじゃないか? という軽い気持ちでした。
それからGoogleを辞めて、GREEに行きました。転職の背景としては、Googleで4年間働き、自分にできることはやり切った気もし始めていた時期で、
本社も海外なので、向こうで頑張るのか、自身の経験を使い、挑戦的な会社に勤めるのか、それとも自身でやるのか、という3つの選択肢がありました。検討している中で、丁度GREEが日本でSNSやゲームで盛り上がっていた時期で、海外展開するタイミングも合致し、自分の経験が活かせるという点からGREEに勤めることに決めました。
そこから二年半後に起業しました。
――そこから起業しようと思ったのは何故ですか?
先程のめんどくさいを無くす、のもとになるのですが2011年は業界的にはUberとかAirbnb、Square等いわいるスマートフォンを使ってリアルに根ざしたサービスが出てきていました。
しかし、日本はというと、当時はまだリアルに根ざしたスマートフォンのサービスはほとんどなく、予約をするときも毎回電話でしなければならない状況がまだまだ多くありました。
ちょっとした日常での出来事から、自分がめんどくさいと感じることに対して意識的になり、そういうものを失くせるようなサービスを作っていきたい、そんなビジョンが見えて、タイミング的に今だと感じたのが理由になります。
心にくる辛さ、自分の悩みを共有できる人の有り難み
—— 失敗したことや、辛かったことはありますか?
そうですね。例えば事業がうまくいかない、お金がなくなる、等、色々ありました。その中でも、一番辛いのは人がいなくなることでした。起業して、人やお金を集めて、サービス立ち上げてやるぞ、と意気込むんですが、大抵うまくいきません。それでも一緒に頑張ってくれる人もいれば、もちろん違うなと感じて去る人もいます。
社長は会社の中心なので当たり前ですが社内外を問わず、すごく見られます。起業したての時はあまり理解できていませんでしたが、会社のトップとして計画したり、改善したりしても、事業が上手くいかず、問題が重なってくると皆疲弊して来ます。
そうすると社長の考えがわからない、方針がコロコロ変わる、言い方がきついと言われ始め、さらに結果も伴わない、となると、どんどん見限られていきます。うまくいかない原因は究極的には社長にあるわけだし、それも仕方がなかったことなのかもしれません。
直接面と向かって辛いことを言われた時や、直接は言われなくてもなにかと理由をつけられて仲間が辞めていく時が一番辛かったです。ただ、それでも残ってくれる社員がいたのは心強かったし、自分自身も頑張らないといけないと思うことができました。
また、自分が心に持っているモヤモヤを理解してくれ、そういった悩みを話せるような人がいることが本当に重要だと痛感しました。
会社組織は一人では何もできません。一人が卓抜した能力を持っていてもうまくいかない。 そういう所も含めて共有できる人がいることが大事だと思います。僕も残ってくれた人と、一生懸命立て直してからまた復活できました。
去ってしまった人については、関係性が濃い人の方が「こいつは駄目だ」と思われることもあります。過去の言い合い等の小さな要因で軋轢を生んでしまったりしました。そんな時は人としてひっぱたかれたように感じました。
――そこから自分を変えた部分はありますか?
変えようと思いつつ、このままでいいと思う部分もありました。逆に吹っ切れてしまえば、後は周りに自分を支えてくれる人がいるかどうかだと思います。あまりに気を使っても悪い結果になりますから。
自分は自分です。好きで始めたし、会社がうまくいかなくても、死ぬわけではない。そう考えると、「よし、好きにやろう」と思えるようになりました。そして自分が自分らしくいられるような環境を作ることを意識しました。そして自分ができないことは、どんどん他の人に任せていって、それをいかに伸び伸びとできるようにするのか、にフォーカスすると、上手く進んだりしました。仕事はこれが大事だと感じましたね。
――そのような辛さの中で、社長を続けられたのはなぜですか?
社長を続けているのは、もちろん自分自身がこの事業に可能性を感じているから、というのもありますが、そもそも自分が好きで始めたものに対して様々な人たちを巻き込んでいる、という責任感もあります。投資家や入社した社員もそうですが、自分の目指す先に対して、周りが賭けてくれているわけです。それを裏切ることはできません。
それに辛いことや悩みに対して考えていると様々なことが見えてきます。突然案が出たり、チャンスが出てきたり等。そして段々、自分たちがやっていることの意味が見えてくると面白くなってきます。
今、6年経っている会社ではありますが、波にのるまでが踏ん張りどころだと感じています。船を懸命に漕いでても無風では進まないですよね。でも風がくると勢いが増す、重要なのはそれです。
弊社の状況はまさにこれで、今波が来ている状況になってきていると感じています。これの難しい所は、波が来てから始めると遅く、沖に出て必死に漕いでると急に波が来て進み出す、ということです。
しかし最初が一番辛いので、大抵はそこで諦めてしまう。そこで粘り続けた人にのみ、流れは来ると信じてやっています。
挑戦しなければ始まらない。漕ぎ出した原動力は自信
—— 当時はサービス自体に自信はありましたか?
サービス自体にも、自分自身にも自信がありました。本気で「うまくいく」としか思っていませんでした。失敗するわけない、あいつにだってできているんだ。そう思っていました。
勿論、その自信は勘違いな部分が多いことが後々判明し、色々と苦労してますが(笑)
ただ、自分への自信が無いと耐えられないし、そういう勘違いがある人でないと始めないとも思います。
特に若い人達は失う物が多くないので挑戦したらいいと思います。挑戦したくてもできない人もいますから。若い頃にしかできないことがあると皆言いますが、その通り。やりたい事があるなら、ダメでも潰しは効くので、頑張って欲しいですね。
始めるにあたり、失敗が怖いというのはありました。特に周りからの批判の目や、うまく行かなかった時に恥ずかしい思いをする、という気持ちを軽く受け流すのは難しいですがこれに関しては自分が思っている程、誰も自分という人間には興味がない、ということがわかってくると、大した話ではないなと思えてきます。
自分は恥ずかしいと思っていても周りは全然気にしていない、仮に失敗しても残念だったねと思うくらいです。
悪く言う人がいたとしても、つきあう人も自分で選べるのでその人とは距離を置けばいいだけだし、自分自身でそういう環境を作っていけばよいわけです。
経験して分かった事はなるようになるということです。様々な問題の中で自分のキャパシティを超えたことをやっているからこそ今があります。萎縮して何も行動しなければ、そこで蓋をされてしまうので。挑戦しないと始まりません。
――最後に若者へのメッセージをお願いします。
失敗を恐れずにとは言いたくないです。何故かというと僕も失敗したくない気持ちがあるからです。ただ許容できる失敗は何だろうか、というのは常に考えた方がいいと思います。再起不能になるような失敗、例えばお金に関わる信用問題は、一回失敗するとなかなか回復できないです。失ってはいけない物はベースとして持たないと痛い目に遭います。
あとは、起業でも何でもそうですが、先人の知恵である程度フォーマットは揃っていると思います。こういう時は気をつけろ、こういうのはよくあることだからこうしたらうまく乗り越えられるなど、成功するための方程式はないかもしれませんが、失敗しないための方程式やフォーマットはある程度はあるとおもうので、それは学んだ方がよいと思います。
最後に、ここで転ぶとこうなる、そのためのバックアッププランは頭のどこかしらには用意しておくといいですね。
失敗を恐れずチャレンジしなさい、と言うとそのような気になってしまいますが、無謀に出て行くのとは違います。若さの勢いを上手に利用して道を切り開いて欲しいです。