本気の大人が本気で学生に向き合う
—— まずは、事業に関して教えていただけますか。
「海外ビジネス武者修行プログラム」という海外インターン(就業インターン)を行っています。ウチのインターンのゴールは「成長」です。成長したい人が来るインターンになっています。
ーなぜベトナムなのでしょうか。
外資系企業で働いていた自分が感じたことは、世界が今最も注目しているのは新興国です。新興国をどうやって攻略しようかという観点からみると、新興国と共に成長することが必要だと思ったんです。自分がアメリカの企業の社長室にいたときからインドや中国はすごい伸びていましたが、ここ数年の伸び率はベトナムが世界1位なので、ベトナムです。
ウチは、7年間くらいベトナムで店舗運営していますが、自転車屋さんをしていた人が携帯ショップを運営したり、ホテルを経営したり、日本の高度成長が来ているみたいな状態が今のベトナムなんです。だからその中でプログラムをすることで、肌で感じ自分の選択肢を増やしてほしいなと思っています。
ベトナムにも正社員が75人くらいいて、お土産屋さんやレストラン、日本語学校、マッサージ屋さんなどを運営しています。ウチのプログラムは、その中で学生が自分で選んで新規事業をしてみるという内容になっています。でも、最もコアなバリューは「本気の大人が本気で学生に向き合う」ということです。
でも、本気の大人をそろえるのは大変ですね。夏のプログラムだけでファシリテーターが50人必要で、その人たちが武者修行に来た学生にビジネス、チーム、人生についておせっかいを焼きます。だから自分について深く考え知ることができます。
ビジネスなんてたかが知れたもんで、一人ではできません。一人で出せるバリューは限られているので、チームでどうやってするかのほうが大事になってきます。それを気づいて持ち帰って、ビジネスをしてもらうことが目的です。そういうおせっかいなインターンがウチの海外インターンなんです。
ーインターンが終わった後に、学生同士は会ったりしますか?
プログラムの事前、事後には会いますが、後はコミュニティがあるのでみんな勝手にしてます。昨日は、私に武者ハウスを作りたいと連絡がきたり、起業している人も沢山いたり、
この間は学生同士でディズニー行ったと連絡がきたり(笑)
大人が本気で向き合うことで、学生も本気で向き合うので、参加者同士も一生もんのいい仲間になるのかなと思います。ターム(1プログラムのこと)を超えてイベントもやっていて、変態超会議(1年に1回しかない武者修了生が集う同窓会)とかね。コミュニティが一番大事ですね。
やっていることが大事なのではなくて、それを通じてなにを学ぶか。
—— そもそも、なぜ成長ができる環境を作ろうを思ったんですか?
大きく2つあって、一つは自分が就活で失敗したからです。めっちゃブラック企業に入ったんです。新聞紙でケツバットをしたり、挨拶が「押忍!」だったり。社員は1000人くらいいて、これから上場を目指す企業だったんですけどね。
学生は働いたことないから、社会のことを知らないじゃないですか。実際にバット振ってみないと分からないし、就業体験をすることで社会を知って欲しいと思ったんです。
もう一つは、その会社が3年で潰れて、外資企業に転職しアメリカにいって、日本人が海外で活躍できていないと思ったからですね。その理由は、語学の問題だけではなく、マインドの問題の方が大きいと思っています。多様性を受け入れたりするダイバーシティマネジメントを何とかしたいと思いました。
それで、海外で就業体験を積むというプログラムを作りました。そのプログラムを早稲田のビジネススクールの修論「海外新興国ベトナムにおける実店舗を用いた 研修ビジネスの成功要因に関する研究 」で書いて、今その通りにやっているという感じです。
ー早稲田のビジネススクールはどのタイミングで行かれたんですか?
39歳の時です。そこで体系的に勉強したいなと思っていたのと、アメリカで働いているときに周りがビジネススクールに通ってる人が多かったからです。でも、受かるのに4年かかりました(笑)試験が難しかったのもありますが、私は起きていることにはすべて意味があると思っているので、それも意味があったと思います。
始めは外資系企業で出世したいという気持ちで受けていましたが、結局スクールに入って2年で起業しましたし、自分が勉強したいなというピークで受かったんじゃないかなと思います。
ーなぜ、入って2年で起業したんですか?
はじめ入りたかった有名な外資系企業にはもうすでに同級生がたくさんいるし、そこにわざわざ入るのではなく、自分でやってみたいなと思ったからですね。早稲田のビジネススクールでは、半年ごとに成績トップ15%が張り出されますが、2年間ずっとそこに入り続けました。そこまでできたのも、4年間頑張って受かったからでもあると思います。入ってからの2年間はずっと勉強漬けでした。それが今の自分の軸になっています。
自分の目の前に起きることにはすべて意味がある 全力で取り組んでいる時は必要なことしか起きない
—— 今までの一番の逆境経験はありますか?
あんまり逆境を逆境とは思いません。起きることにはすべて意味があると思っているので。
ーなぜ4年間スクールで頑張れたんですか?
アメリカでビジネススクールに通っていた仲間と話してて、楽しそうだなと思ったのと当時、ヘットクオーターを香港かシンガポールに移す話があって、もしそうだったらちゃんと勉強した方がいいなと思ったからですね。
日本人はみんな自信がないです。人と比べてどうとか。私はそこではないと思います。自分の納得感だと思っています。比べていたらいつまでたっても自信がないことになると思うからです。
この考えは、武者修行をするようになってから気付きましたかね。
ー昔から自信はあった方ですか?
んー、そこは微妙かもしれないですね。でも起きていることは全て正しいと思っているので、納得感はあると思います。
でも、唯一人生で後悔していることは、大学受験をしなかったことです。高校は親に日大の付属に入れられて、そのままエスカレーターでいったので自分で意思決定していませんでした。だから、早稲田のビジネススクールに行ったのは、大学院に行ってちゃんともう一度勉強したかったというのもあります。大学受験にチャレンジしておけば良かったなと思います。
27歳までは、ただ流されて生きてきて「7つの習慣」という本を読んで人の気持ちにを分かるようになって変わりました。そこからモテるようになりました(笑)今までは自己中心的でした。
ーその本を読んでどう変わりましたか?
それを読んで、人ってこういう風に考えるんだと思いました。だから、嫁さんと喧嘩したことはないです。秘訣はマーケティング。相手のニーズを満たすということですね(笑)
マーケティングは、結局お客さんの気持ちになって考えないと上手くいかなくて、コミュニケーターでもあるべきなんです。それを読んで、お客さんになりきれるマーケターになったと思います。相手の立場になっていろんな物事が考えられるようになりました。海外の人とのやり取りも、肩書がとかではなく相手の立場にたって会話することが大事です。
例えば、30歳の時、アメリカに行ったときは共通言語が英語だったので大変でした。私が外資企業に入ったとき、TOEIC500点くらいしかありませんでした。そこから死ぬほど勉強しました。
だからそれもあって、「滝行」(実践型短期集中英語特訓プログラム)という日本大学生向けのクラスを作りました。自分がTOEICで10年くらい苦労したので、みんなには苦労してほしくないなと思ったので。
大変なことがあった後は必ず神様がプレゼントをくれる
大前提として自分が全力を出しているときですが、本当に必要なことしか起きないと思っています。
恩師である早稲田の長谷川教授がよく言っていたのですが
「大変なことがあった後は必ず神様がプレゼントをくれる」
スピリチュアルとかではないけど、本当にそうなっています。
今の会社も6年になるけど、無事に成長し続けていますし。
人間は自分のために全力は出すことはできなくて、全力な時は、他人にベクトルがある時です。それはお客さんや仲間だったりしますが、ベクトルを他人に向けているときかつ、全力でやっている時に起きたことは、すべて必要なことです。たとえそれが逆境だったとしても乗り越えられるし、神様は乗り越えられる試練しか与えないと思います。自分が乗り越えられる時に与えられてて、それを乗り越えたときにご褒美をくれるようになっていると思います。
だから本当にちゃんとやるべきことをしている人は、しかるべきタイミングでしかるべきことが起きるんだなと思います。
ー最後に学生に向けてメッセージをお願いします。
まずは「他人にベクトル向けてますか」と問いたいですね。自分のために頑張ることはではなくて、例えば子供や嫁さんや他人にベクトル向けているかと自分に聞いてみて欲しいです。「ベクトルを自分に向けてないかな」と。自分にベクトルが向いているうちは物事は上手くいかないと思います。
ー自分にベクトルが向いてるかどうかはどうやって気づけますか?
自分でチェックすれば分かります。どうやって他人にベクトルを向けるかは2つポイントがります。
一つ目は「自分として生きてるか」自分の軸をもって活動してること。自分の軸を持っているということは、自分がちゃんと積み上げてきているからできることです。どこをもって軸とするか、どのレベルかは人それぞれで、自分は何者かを軸としてもいいし、譲れない何かがあるとかでもいいので、とにかく、自分なりの意思決定を積み上げているかどうかが大事です。
二つ目は「他人にベクトルを向けたほうが自分の成長や得られるものが最大化することを体感で知っているかどうか」です。
とりあえず、返ってこないつもりで他人にGIVEしてみる。すると実は得られるものは2、3倍大きいということを知っているかどうかです。
結婚生活に例えると、「俺はこれだけ稼いでるから、ちゃんと返すべきだ」とか思ってる人と結婚したくないですよね。ちゃんと自分のこともしつつ、見返りを求めているオーラを出さない人と一緒にいたいと思いますよね。そしてそういう人には、自然とGIVEしたいと思います。結婚生活もビジネスもプライベートも全部一緒で「TAKEくれ!」といってる人にあんまりGIVEしたいと思いませんよね。
まとめると、まずは自分がちゃんとしていないと他人にGIVEできないので、まずは積み重ねて自分の軸を持つこと。その上で他人にGIVEをした時の体感を知っているかどうかです。それを自分で分かって行動していれば、全力を出せると思います。
ー今後はどうしていきたいですか?
いいBeing(あり方)の人を育てていきたいです。日本は何をするかということにフォーカスしすぎていると思っているので、どういう人がやっているかということをもっとみるべきだと思います。例えば、いいBeingを持っている人だったら、マスメディアをみんなのために使えるけど、そうじゃなかったら利益のために使ったりしますよね。だからBeingとdoingは結びついていて、物事のいい悪いではなくてどういう人がそれをするかが大事だと思います。
いいBeingとは、他人にベクトルを向けられる人。そんな人が増えたら、世の中変わると本気で思います。自分の3歳の息子が大きくなったとき、日本っていい国だよねってなったらいいなと思っています。