社員全員がエンジニア
—— 社員全員がエンジニアだということですが、どのようにして営業されているんですか?
全て口コミでお仕事を依頼してくださるお客様で、特に広告を出したり、営業をバリバリやっているということはありません。起業してからもうすぐ4年になりますが、ありがたいことに、たくさんのクライアントからの依頼を受けています。
IT開発でよくSEO(検索エンジン最適化)対策をしている会社も多いのですが、弊社はそういう小手先の技術ではなく、もっと本質的な「良い商品を作る」部分に力を注ぐようにしています。
そうすることで無駄なコストを省くことにつながっていきます。
SEOや営業に力をいれたとして、その部分の費用を負担するのは結局クライアントになってしまいます。しかし、弊社はWebプロモーションや営業人員に力を注いでいないので、開発コストに妥当性があり、クライアントはこのような部分に価値を感じてくれることが多いのではないかと考えています。
これに加えて愚直に、まじめに仕事を行うということを心掛けています。
丁寧に仕事をするということは信頼を得ることにつながり、クライアントにもいい会社だなと感じてもらうことができます。
この体験がよかったと思ってもらえればよい評判は自然と口コミで拡散されていきます。
妥当な開発コストでよい商品を作り、愚直に、まじめに仕事を行うことがお客様が増える要因ではないかと考えています
9年間に5つの転職。遠回りはしたが決して無駄ではなかった。
—— 小俣さんは35歳に起業されるまでどんなことをされていたんですか
まず新卒後は4年の間に2つの会社に勤めていました。この時代は大きな会社に入ることこそがいいといわれていたので、ただ大きな会社に入ることにフォーカスしていました。
そして大手企業に就職が決まったのですがそこではうつ病になりかけてしまいました。
大手の企業はとにかくたくさんの人がいて、僕一人が倒れたとしても事業が止まらないようにバックアップする人が何人もいます。自分がいなくてもこの会社は回るし、自分がしている仕事自体、会社にとってどうでもいいレベルの仕事で、そんな状態に自分の存在意義を感じられなくなってしまいました。
そんな時に会社の先輩にベンチャー企業への転職を誘われました。その時転職を決意したのですが入って1年目の時にはすでに倒産寸前の会社でした。
給料が1か月遅れで支払われることもあり、その当時は危機感と同時に大きく後悔していました。
しかし、どうせ転職したなら自分が好きなことをとことんやってみようと前向きに考え、その後面白法人カヤックに入社しました。
同社はいろんなプロモーションの事業をやっていて、ディレクターというポジションで仕事をしていたのですがすごく面白かったんです。自分がやった分活躍の実感があったし、会社を大きくできるという感覚がありました。
その後は株式会社クルーズに入社し、3か月で取締役に就任することができました。
私は野心家な部分があって、最初は企業をしようとは全然考えていなかったのですが、やっていくうちにどんどん上に行きたい、という想いが強くなり、自分で会社を立ち上げたいと感じ、そこで初めて企業を決意しました。
—— たくさんの会社に勤めてから起業されたんですね
ITベンチャー系の社長はだいたい大学か20代前半で起業することが多いのですが、私は35歳で起業したので、一般的に見るとすごく遅いです。
しかしここまでの道のりを無駄だと思ったり、遠回りだったと感じることはありません。今振り返ってみると教育期間という意味ですごく有意義な時間だったと思っています。
例えばNTTコミュニケーションズでに勤めたことで経営で生かせる様々な知識を習得することができました。
同社はプロジェクトマネジメントやITIL(アイティル、ITサービスマネジメントにおける成功事例を体系化したいわば教科書みたいなもの)の研修など教育システムがしっかりしていて、自分が独立して会社を運営していく際に非常に大きな役割を果たしてくれました。
死ぬ間際に見る走馬灯を豪華にしたい
—— 小俣さんが今後目指すものはなんですか
私はDJなどもやっていて、クラブに行くことがあります。ある時、あまり売り上げがよくないクラブで学生がアルバイトしていて、静かに掃除していたんです。
その子に「君は何でここでバイトをしているの?」と聞いてみたんです。すると、
「絶対にDJになって、死ぬ間際に見る走馬灯を豪華なものにしたくて。そのために今ここのバイトで頑張っています。」
って答えられて、その言葉が自分の中にすごく響いて、私もそんな人生を送りたいと考えるようになりました。死ぬときにお金などは持っていくことができないけど、いろんな経験をした人はたくさんの思い出を持っていけるじゃないですか。
私の思う幸せ人生はプラスの面とマイナスの面両方大事だと思っていて、これらの振れ幅が大きい人ほど、同じ経験でもより価値を感じることができると思っています。
例えば結婚するにしても、何の事件も起きることなくただただ平凡に結婚するよりも、2人とも結婚を目前にして大きなトラブルに巻き込まれて、そこで2人の間に摩擦が生じて結婚破棄。あと少しで手に入れられた幸せを逃し、人生のどん底に叩き落される。
しかし、それはお互いのすれ違いで誤解が解け、晴れて結婚することができるようになる、といったシチュエーションのほうが大きな感動を味わうことができると思うんです。
挑戦したうえでの失敗は構わない。怖いのは失敗を恐れて挑戦しなくなること。
—— いい人生を送るにはプラスの要素はもちろん、マイナスの要素も欠かせないということですね
今の世の中、普通に生きていたらマイナスの体験なんてしたくないと思うだろうし、マイナスの体験が起こりにくくなってきています。
これは私の視点で見ると幸せの価値を感じることができる人が少なくなることだと考えていて、もったいないと感じています。
よくみんな「失敗した」という言葉を使うけど、失敗したと思っていることはたいてい失敗ではないです。失敗の経験が糧となるってよく言われると思うんですけど、これが大事です。私の感覚的には挑戦したうえでの失敗は失敗ではなくて、それは成功のための道のりでしかないんですね。
むしろ怖いのは失敗を恐れて挑戦する心を失うことです。
事業も、うまくいかないことのほうが圧倒的に多い世の中で、新作ゲームの開発に関しては、「100本に1本当たれば…成功!」という様な厳しい世界です。
それをいちいち失敗だととらえていたら数えきれないほど失敗しています。
あなたはラーメンを食べて心の底から感動していますか?おそらく普通においしいなと感じるくらいではないでしょうか?
しかし余命三か月の人がラーメンを食べると、ラーメンて本当においしいなと心から感じることができると思います。現代はあらゆる贅沢が当たり前になってきていて、どんどん身近にある価値や幸せを感じづらくなっています。
だから贅沢の価値を感じたかったら実はマイナスの方向に振り切るというのも一つの手です。
つまり、失敗やマイナスのことは決して悪いものではなく、人生の幸福度をあげてくれたり、身近にある価値に気づかせてくれるものなのです。だから失敗を恐れることなく、今後の自分の成長だったり、幸せな人生のための糧だと思って挑戦し続けてほしいと思います。