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【株式会社フォトラクション 中島 貴春】「自分の気持ちを大切にすること」成功における直観の重要性

2019/09/30

Profile

中島 貴春

株式会社フォトラクション 代表取締役

1988年生まれ。2013年に芝浦工業大学大学院建設工学修士課程を修了し、株式会社竹中工務店に入社。大規模建築の現場監督に従事した後、建設現場で使うシステムの企画・開発およびBIM推進を行う。2016年3月にCONCORE'S株式会社(現 株式会社フォトラクション)を設立。国内で約3万件の現場で使われているクラウドサービス”Photoruction(フォトラクション)”が誕生した経緯とその思いを聞いた。

テクノロジーの力で建設業をスマートでかっこいい世界にする

—— 株式会社フォトラクションの事業の内容を教えてください。

事業内容としては、建設業向けのクラウドサービス、今はPhotoruction(フォトラクション)という工事現場で使うクラウドサービスを提供しています。建設事業と聞くと、いわゆる3Kだとか、泥臭くやってるようなイメージに捉えられがちなのですが、我々はそこにテクノロジーの力を使って、建設業がスマートでかっこよく働いている世界という風に思われるようにしていきたいよね、という思いでサービスを作っています。

工事現場には、職人さんを束ねる現場監督という役割の人がいるのですが、現場監督はその現場を見回ったりして、問題がある個所を探したり、工事の進歩を確認したりしているのですが、雑務がめちゃくちゃ多いんですよ。例えば、工事の証拠としてあらゆるタイミングで進行具合の写真を何十万枚と撮って保管する、資料作成や報告書を管理するなどがあります。またそのような必要業務に追われて、本来しなければならない品質確認などが疎かになってしまっては本末転倒ですよね。そんな大量の管理業務や雑務を楽にするためのクラウドサービスを提供していて、現在国内で約3万件の現場で使われています。

また人工知能も活用しようとしています。今は、過去に使われたクラウドサービスの大量のデータを学習させている段階ですが、ゆくゆくは雑務をクラウドサービス上で終わらせるだけではなく、データをアップロードするだけで全てまとめてくれるような人工知能を作り出したいなと思っています。

~本当の意味で現場の役に立ちたい~フォトラクションの原型は趣味で作ったプロダクト

—— どのような経緯で起業に至ったんですか?

僕は前職が建設業で、会社全体のITをまとめる部署にいました。どうやったらITを使って現場をアシスト出来るのかなどを考えることがあり、実際に現場に行くこともあったのですが、正直「こんなにアナログなのか」と思っていました。というのも、実際の現場の状況を知らないなかで、作られたシステムがほとんどだったので、現場に役に立つものが届いていない、ということをその時に知りました.

もともとITが好きだったので、そんなアナログな建設業の現状を改善できるようなサービスを趣味で作ろうかなと思い、週末はプログラミングの学校に通っていました。その学校に、学生たちのプロダクトをベンチャーの社長などが見に来るデモデーという変わったイベントがあり、そこで僕のプロダクトを見た社長達から、起業してみたらいいんじゃないか、という強いアシストを受けたのが起業のきっかけになりました。

僕が他の起業家と変わっていると思うのが、「起業したい」という思いからではなく、「このサービスを広げたい」っていう気持ちで起業したところかも知れませんね。

—— 考えていなかった起業に対して、不安などは無かったんですか?

あんまり無かったですねぇ(笑)。個人的には別にリスクっぽいリスクはないと思っていて、起業に失敗したから何かあるというわけでは無かったですし。

自分の気持ちを無視すると結果はついてこない

—— 今までの失敗で「これは教訓になった」と思ったものはありますか?

具体的には語れないのですが、前職の時にかなり大きいプロジェクトを任されていて、それは結果的にうまくいきませんでした。そこまでにかかった数千万円がただ飛んじゃいましたね。

その原因は自分自身がそのプロジェクト自体を信じてなかったことにあると考えています。最初にプロダクトの理想像を聞いて、「本当に出来るのかこれ」みたいな気持ちがあったのですが、仕事だからという気持ちのままに進んでしまっていました。そんなモヤモヤした気持ちのまま進め、結局8か月くらい予算を使ったあたりで上司から「もうこれやっても意味なくない?」という一言で打ち切りという形になりました。

ここから学んだことは「何事も自分の気持ちがモヤモヤしている状況で進むと、結果的に良くならないな」ということですかね。一見正しいように見えることも何かモヤモヤを感じていることってあると思うんですよ。そういうのってまぁ大体間違っていることが多いので、もう一度しっかり見返して判断することを学びましたね。

—— じゃあ本当に絶対の自信と作りたいという思いがあれば、結果は変わっていたんでしょうか。

そうですね、全然変わっていたと思います。その思いがあれば、不安要素を全てリスト化して、それにどう対処していくのかをちゃんと納得した上で進められていたかもしれません。それが出来ていたら結果は変わったでしょうし、もしかしから1円も投資する前に止められたかもしれないわけじゃないですか。

若いうちはこういうことってよくあることだと思うんですよ。うちも最初2人で始めた会社ですけど、社員もかなり増えてきて、もう僕がトップダウンで決められることも少なくなってきたんですよね。各々のリーダーにそこの判断は任せているんですけど、その人たちにモヤモヤした気持ちがあっても僕には見ることが出来ないので、自分で判断する方法やコツを身に着けて欲しいですね。

「戻れない決定」は慎重に、「戻れる決定」は即行動

—— 他にやることがあったとしても、気持ちの優先順位をあげることは大切、ということなんでしょうか。

そうですね、ただ「今」決定すべきことじゃないなら、先延ばしすることは悪いことじゃないと思っていています。巨額の投資が確定するような、「戻れない決定」ってあるじゃないですか。特にそういう決定はモヤモヤしたまま決めてもダメだし、判断材料が揃うまで先延ばししたほうが良いこともあると思います。

逆に「戻ってくる決定」は失敗すればまた改善するだけなので、スパスパやって軌道修正を繰り返せばいいと思っています。不可逆的な問題こそ、直観と自分のモヤモヤを大切に見るということは学んだことだと思います。

—— 何千万という大きな失敗をしたときの当時の気持ちはどうだったんですか

正直にいうと会社のお金なので僕自体はあんまり痛くなかったですね(笑)。売り上げも何兆円もある会社で、プロジェクトが潰れることなんてよくあったので、会社としてお咎めも何もなかったです。それに沢山のプロジェクトを回しているなかの一つだったので、あんまり落ち込むとかは無かったですね。

ただもし今、同じような失敗すると落ち込むとかのレベルじゃないと思います。というのも大企業って失敗しても全然変わりは効くし、何千もあるのプロジェクトの中の一つなのでそんなに大きな影響はないんですけど、これが小さい10人規模の会社になると、1人失敗したら10%の不利益になるので、責任が全然違うんですね。やっぱり今は圧倒的に気を付けていると思います。

—— 大企業から独立という経緯を経て、今だからこそ経験できること、独立して良かったことなどはありますか。

独立して経験できることっていうと、まず「会社の作り方」や「お金の集め方」など初期段階のことから、自分で開発したサービスのリリースから広報して契約取ってサポートして、人に任せて、って流れを全て経験できますよね。大企業だったら一つの歯車を回せばいいだけです。そういう意味では事業の全セグメントを経験できるっていうことはすごい面白いなと思うし、それが一番独立して良かったことかなと思いますね。

あとは、様々な企業さんとお付き合いさせていただいて、新しい技術や企業の仕組みとかを知る機会が多いのも独立して良かったことですね。前職が建設業界の中でも「ビッグ5」と言われるくらいのピラミッドの一番上だったので、流れの末端の企業まで意識することは無かったんです。

目先のメリットにこだわらず「今やりたいこと」する

—— 最後に若者に伝えたいメッセージをお願いします。

自分がちょっとでも興味を持ったことには果敢に挑戦してほしいですね。今は特に利益とかメリットとかを考えることが多いと思うんですけど、僕の周りの活躍してる人って、あんまりそこを考えていない人が多くて、「なんか楽しそうだからやってみる」とかそんな感じなんですね。

僕も建設業のサービスをやってると、周りから「めっちゃニッチなところ攻めてるよね」とか「お金になるの?」とか結構言われるんですけど、まぁ僕がやりたいからやってるだけなんだよねって感じなので、その先どうとかあんまりないですね。さっき述べたように、自分の気持ちをフォーカスしたほうが、良い経験も出来るのかなと思います。

株式会社フォトラクション

設立 2016年3月14日
資本金 201,000,000 円(※資本準備金含む)
売上高 非公開
従業員数 20名(2019年9月現在)
事業内容 インターネットサービスの企画・開発・運営
URL https://corp.photoruction.com https://twitter.com/photoruction_pr
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