自分でもファンドを作りたい。投資家からのアドバイスを受けて起業の道へ
—— 大学卒業後のファーストキャリアから起業するまでの経緯を簡単に教えてください。
大学時代、就職活動で商社や電力会社などの面接に全て落ちてしまったんです。そこで、色々探した結果、インターネットサービスに投資するベンチャーキャピタルというものがあるということを知って。
それで、ベンチャーキャピタルにインターンさせてくださいとお願いして回って、それで多くの企業さんでインターンをさせていただくことができたんです。それから2017年に株式会社ペイミーを設立して独立しました。
—— ベンチャーキャピタルで働いてみて、どうでしたか?
やっぱり全然次元が違うし、僕が入ったベンチャーキャピタルは、メルカリができた瞬間に5,000万円投資して、結果的に1,000倍以上のリターンを得られているようなところでしたし、すごく面白かったですね。
投資してリターンが発生するまでのスパンは事業によってかなり違っていて、たとえば、商社とか建設会社とかでボスファラス海峡に橋を作ります、というプロジェクトを立てるなれば、5,000億かけて30年ぐらいかかっちゃうんですよね。一方で、アプリに対する投資だとUberとかAirbnbみたいに2〜3年で世界シェアを取って莫大なリターンを生む場合もあるんです。
投資する事業のスピード感と規模が桁違いで、そういった企業の成長に対してすごく面白みを感じていました。
—— そこから起業されたきっかけは何だったのでしょうか?
一番は投資家からアドバイスをもらったことですね。僕はベンチャーキャピタルで働いているときに、「伸びている起業の現場に送ってください」とお願いして、色んな起業家に会わせてもらったんです。
それこそメルカリにも行かせてもらって色んな経験をしましたし、CAMPFIREや、DeNAでも働きました。つまりは企業サイドと投資サイドを両方とも経験したし、事業を作り上げる経験もした。投資サイドのDeNAでもいろんなサービスの構造を勉強させてもらったんです。
その頃から、自分でもファンドを作りたいと思いはじめていて、「ファンドを作りたいです」という話を、少しずつ相談していました。そこで、一人のエンジェル投資家の方から「それよりも、自分で事業をやったほうがいいよ」とアドバイスをもらって、考えを改め、即日払いに対応したPaymeで起業したという流れです。
給料日に違和感。即日払いサービス「Payme」を開始
—— なぜ、即日払いのサービスだったのでしょうか?
自分が学生だった時に、初バイトの初給料が約2ヶ月間遅れたことが大きいですね。
4月にバイトを始めて、給料を支払われるのが翌月末らしいと聞いて待っていたら、5月末にも給料が支払われなかったんです。なぜかと聞くと、4月が研修期間で5月が本採用になるから、ということでした。その経験で、給料を支払うまでの期間があることに違和感を感じたんです。
あとは、先のようにファンドを作りたいという気持ちもありました。将来価値が高いけど現在価値の低い人にお金を渡して一緒に成功するっていうのがやりたかったんですよね。たとえば、起業する東大生に300万円渡しますっていうのも面白いと思いますし。
お金を渡して回収するという意味では、僕の事業もベンチャーキャピタルと同じで。でもペイミーの方がより小口で多様なニーズが生まれやすいと思ってて、要はマイクロベンチャーキャピタルとしてやっているという感じです。
—— 起業する時に不安はありましたか?
もちろん不安はありました。ですが、不安はあるけど決めたらやるだけ、あとは突っ走るだけなので、起業する上で不安が弊害になることはなかったですね。
そうは言っても、さすがに何も調べないで始めるのはまずいですけどね。たとえば、調べた上でも不安が残っていて、それにもやもやしてしまうとするじゃないですか?でも結局、そのもやもやって、何をしても残るものなので、ならいっそ無視して頑張るほうがいいんです。
僕は昔、空手をやっていたんですけど、殴られるのが嫌だったら、前に入っちゃった方がいいんですよね。つまりは、不安や恐れがあるなら逆に飛び込んでいく方がいいということです。
伝えるのは難しい。ロジック的な理解とは別にイメージの大切さを痛感
—— 会社を経営していて何か失敗したことはありますか?
失敗したことは多分何度もあるんですけど、失敗したことは全部忘れちゃうから、これといった失敗談は特にないですね。(笑)
大変だったことをあげるとするなら、サービスを正しく理解してもらうことです。Paymeってある意味ではサラ金とか貸金とか、貧困搾取なんじゃないかとか言われて、そのマイナスイメージを払拭するのが大変でした。
—— そのイメージはどのようにして解決されたのですか?
今も、世論形成をしている最中なんですが、具体的には初めのイメージが悪くなってしまわないようにしています。
たとえば、貧困搾取だろうと叩かれているときに、相手にロジックを1から10まで説明しても全く響かないんですよね。そんなことよりも、誰もに共通するような給料日の記憶でアプローチした方がいいとか、ロジカルじゃないところから話す方がいいのかもって学びはありましたね。
もちろん、ロジカルに考えてメリットがあるなら、そのメリットを使って説明して行くべきなんですけど、やっぱりそれだけじゃなく世論形成をしていく上で、世間的なイメージも大切だなと思います。
今は貧困搾取みたいな、マイナスイメージは徐々に払拭しつつあります。
基準値が違えば価値観の押し付けになる。レベルが違うなら相手の価値観を高めてあげること
—— 経営する以外で、人生で失敗したことはありますか?
そうですね。自分ができることは人もできると思いがちだったところですね。
たとえば自分が甲子園を目指している野球チームに入っているとして、だけど甲子園を別に目指していない野球チームとでは、そもそも基準値が違うので、同じ量の努力をできるはずがないんですよね。朝練して当然だし、夜も練習して当然だし、食事からアスリートの体を作っているみたいな人にとって、タピオカ飲んでるような野球チームとはレベルが合わないんです。
以前の僕は、別基準の相手に対して、自分の価値観を押し付けてしまっていました。「何で俺100本も売れてるのに、お前は1本も売れてないんだよ」みたいな。それってやる気とかの問題とかじゃなくて、マニュアルがなかったり、フィードバックが足りないのが原因だったりする。
価値観を押し付けるという部分が、失敗とまではいかないけど、気をつけている部分ではあります。
—— 会社を経営する上で意識していることがあれば教えてください。
すべての責任は社長である自分にあると思っているので、自分が「構造」で解決することを意識していますね。
たとえば「うちのバイト使えねぇなぁ」とかいっている会社があるとしたら、そこはアホな会社です。なぜならそれはマニュアルが徹底されていないから。バイトに思い通り働いて欲しいなら、マニュアルは必ず作るべきだし、マニュアルがあっても読まれてないなら研修をやって読ませるべき。すべて構造で解決するだけです。
だから、従業員が自分の思うような結果を残せていなかったり、しっかり働いていないのは社長である自分の責任であって、当たり前にできる基準を高めてあげるというのが、社長の役目です。ただ、自分が忙しくなっちゃうと、一つ一つを解決する作業ができなくなりがちなので、結構難しい部分だとも思ってます。
当たり前の基準を高めてほしい。頑張るためには習慣化すればいいだけ
—— 最後に、今自分が頑張れずに悩んでいる学生へのメッセージをください。
当たり前の基準を高めてほしいと思います。
そのためには構造・仕組みを習慣化しなくてはいけない。習慣化するためには、とにかく小さいことを決めてそれを1年間やりぬくことです。筋肉痛を感じないと気持ち悪いっていうくらい、毎日筋トレするのが当たり前になるような状態ですね。
たとえば毎日1冊本を読むと決めて1年間やると、本を読んでいない日が気持ち悪くなるだろうし、そうすればたった1年間で知識量が圧倒的に変わるんですよね。だから当たり前の基準値を上げて、その日のモチベーションに左右されないように、頑張れる日と頑張れない日という努力量の波をなくすことが大切です。
基準値を上げて習慣化させる方法はいくつかありますが、付き合う人を変えたり、時間の使い方を変える、住む場所を変えるなどでその問題は解決します。たとえばですが、サッカーを知らないもの同士で教えあってもサッカーは上手くなりません。学生同士で就活の話をしててもしょうがなくて。そういう意味では、どんどん付き合う人を変えることをオススメします。