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【株式会社フーモア 芝辻 幹也】前頭葉の発達前が勝負!? 漫画家を志した社長が描く「凡人のクリエイティブ」とは

2019/09/28

Profile

芝辻 幹也

株式会社フーモア 代表取締役

幼少期から漫画家を志すが、大学院卒業前に断念。新卒でアクセンチュアに入社。1年ほど働いた後、ハウスシェアのメンバーと起業し、グルーポン系の事業を行う。競合増加の影響を受けて事業撤退。マーケティングの会社で働く。その後、2011年に株式会社フーモアを創業。代表取締役に就任した。ゲームイラストのクラウドソーシング事業、プロモーション向け漫画制作事業など、エンタメを使った新たなビジネスソリューションを提供し、近年急成長を遂げている。
そんな芝辻氏に常識を破るクリエイティブな発想の生み出し方を聞いた。

モラトリアムを最大化する

—— 芝辻さんは小さい頃から漫画を描かれていたと聞いています。どんな漫画を描いていたのでしょうか。

高校生の時は「胡瓜くんと苺ちゃん」っていうSFの漫画を描いたんですが、シナリオとしては、

『人間が、地球で生活できなくなる未来を予測して、宇宙で植物を栽培できるように品種改良する。そしたら突然変異が起きて、野菜が意思を持ち歩き始めたりする。野菜たちは自分たちが食べられるために宇宙で栽培されていたことを知り、宇宙ステーションから脱走しようとしたり、人間をやっつけようとする』

っていう物語ですね。

—— すごい発想力ですね!いつまで漫画家になろうと考えていたんですか。

26歳まで漫画家になりたいと思っていましたね。でもやっぱりダメだった時も考えて、大学に行きました。漫画を描いて出版社に持ち込めるので東京の大学がよくて、また親の希望が国立だったので、東京の理系国立大学に行きました。

それで6年間、院に進学しても粘って描いてたんですけど、結局は向いてないんだろうな、と諦めました。漫画家ってスポーツと同じで年齢が行けば行くほどデビューが難しくなってきます。若い時に売れてなくて後から売れた漫画家ってほとんどいないんです。

じゃあ漫画家になれなかったし、なんでもいいや、と就職探しは「モラトリアムを最大化すること」を考えていました。漫画家以外の人生を歩むといっても、いろんな選択肢がありますよね。その選択をする前のモラトリアム期間がほしかったんですよね。

理系の院生ってほぼ推薦で企業に就職するんで、自分も推薦で就職しようとしてました。でも、大学の授業で企業インターンをした時に、「理系ってこういう仕事で、こういう人生」っていうのが想像できてつまらなく思えてしまったんですよ。

それで、「いろんな業界を見たい」と思うようになり、新卒で外資系コンサル企業に入りました。社会人になっても、まだ決断をする前のモラトリアムがほしかったので、いろんな選択肢が見れる方がよかったんですよ。

—— 1社目の外資系コンサル企業ではどのような経験をされたのでしょうか?

仕事では、ロジスティクスやシステム導入のプロジェクトに関わったりしていました。とにかく言われた仕事をやろうってスタンスで、時間も関係なく、頑張っていました。

一方プライベートでは、男4人でボロ屋を借りて、一緒に暮らしてました。ハウスシェアってやつですね。そこには商社の人とコンサルの4~5年目の人と、ベンチャーで働いている人がいました。平日の昼間は外資コンサルで、土日と夜は違う業種の人たちとの中で生活してたんで、結構刺激的な日々でしたね。

自分では、外資コンサルでの目線とプライベートでの目線の二つ持っていたのがとても良かったと思います。新卒で入った会社って、その世界が社会の初めての接点となる可能性が高いんで、それが当たり前だと思いがちなんですよね。外資コンサルでは、同期との競争や上昇志向は当たり前だし、めちゃめちゃ働くのも当たり前です。一方、商社やベンチャーでは全然違う世界があるのも知ってたので、俯瞰してみることができました。

結局、ハウスシェアのメンバーに起業しようと言われて、入って1年ちょっとで1社目の会社をやめました

絵って人の心動かすんだ

—— 起業してどんな事業を行ったのですか?

当時、グルーポンというサービスが日本に上陸前で、伸びていた時期だったので、グルーポンの事業をやりました。3人で起業して、1人は経営や会社の戦略を考え、1人は営業系をやっていました。自分はマーケティングをやりました。

当時、自分ではいろいろできると思ってて、入った瞬間に経営コンサルティング名乗れるぐらいに思ってました。でも全然ダメでしたね。本当に挫折しました。営業→制作→納品→請求書提出→入金確認、って一連のフローの言葉尻はわかっていても、本当の意味ではわかってませんでしたね。

アクセンチュアでは会社の箱とブランドがもう出来上がっていました。誰かが営業してきたものを、自分が実際に試算してまとめて、上司に提出する。一部の工程に関わっているだけなんですよ。だからこそ企業として生産性が高くて強い、というのもあるんですが。

結局グルーポンの事業は撤退しました。サービスリリースのタイミングで競合が既に約50社出てきてしまい、その年の年末には250社も出てきていました。店舗と営業ルート獲得の闘いになり、小さいベンチャーでは勝てなかったんですよ。資本の戦いが激しい、リピート率が低い、自分がその事業に情熱を持てない、ビジネスは上手く行かないんだなと言うことを学びました。

会社売却後に、ちょうどあの世間を騒がせた「*おせち問題」が起きました。

—— タイミングが良かったんですね。その後はどうされたのですか?

まあぷらぷらしてたんですよね。マーケティングの会社に入ったり。で、そのときに、結婚式で80人ぐらいの似顔絵を描いてほしいっていうオーダーを知人から受けたんですよ。それで80枚ぐらい描いて納品しました。その結婚式に招待されて行ってみると、タブレットの席次表があって、自分が描いた似顔絵が並んでいるんです。

そこでびっくりしたのは、絵がきっかけでコミュニケーションが起きていたことです。だいたい新郎の上司がコメントしてるときって、新婦側の人たちはご飯食べてるじゃないですか。でも、「あの人の似顔絵が面白いから、気になって見始めちゃった」って、みんな見てるんですよ。やっぱり「絵って人の心動かすんだ」って強く実感しました。

それで、絵なら情熱を持てそうだと思い、絵や漫画に関わることで何かやろうって決めて会社を作りました。

別領域の学びを応用することが「凡人のクリエイティブ」

—— そこで株式会社フーモアが立ち上がるのですね。「クリエイティブで世界中に感動を」は創業当時からのビジョンでしょうか?

いえ、最初は「マンガを世界に」でした。「マンガ」というのは、紙じゃない新しいデバイスにあったマンガ、という意味を込めました。当時スマホが普及し始めていて、「新しいデバイスに合わせてマンガを作らないとダメだ」と、縦スクロールのスタイルを提唱していました。

また、マンガの作り方に関しても、1人のマンガ家が描く通常の体制ではなく、分業体制という新しい作り方を考えていました。マンガを作るには、「シナリオ書く力」、「絵コンテに落とす力」、「作画の力」が必要です。でもこれはそれぞれ全く別のスキルで、1人の漫画家に求めるのは結構しんどいんです。実際世の中に、本当にいい漫画家なのに、惜しい人いっぱいいるんですよね。シナリオ面白いのに、絵コンテの表現悪くて読みづらい、とか。だったら、それぞれの人が得意なことやって作った方がいい、と分業体制にしました。

その後、グローバルに向けて「Mangaを世界に」に変えたりもしましたが、「マンガ」でも「Manga」でも読み方が同じだから、やっぱり「紙の漫画」を想起されてしまいます。「漫画を翻訳するの?」とか言われて、「いや、違う違う」と。

そこで、新しいスタイルや新しい作り方を生み出すのは「クリエイティブ」なことだし、マンガ事業と同時に行なっていた「ゲームキャラクターのイラスト作成事業」が伸びていたこともあり、「クリエイティブで世界中に感動を」になりました。

—— 「マンガ」の新しいスタイルや新しい作り方といった発想はどこから出てくるのでしょうか?

自分の領域を広げることですね。よく「常識を疑え」なんて言いますけど、「疑う」というより、他の分野で学んだことを「応用する」んですよ。アニメでは、シナリオ作る人、原画を作る人、動かす人、って分業して作るのは当たり前ですよね。だったら、マンガでもやってみたらいいんじゃないか、って応用したんです。

いろんな業界、いろんな学問を学んで知識として持っていると、自分の価値が高まっていきます。例えば、自分が持っている「絵を描くスキル」、「ビジネスのスキル」、「理系学問のスキル」がそれぞれ100人に1人の価値だとしたら、それらを掛け合わせて100万人に1人の価値が生み出せます。

「絵を描くスキル」だけで戦おうとしても、絵が上手い人なんてごまんといますから、それは厳しいですよね。天才は一つのことが突出してるからそれだけで良いのでしょうけど、凡人は自分の領域の面積を広げることで価値を創造することができます。

自分が今まで知らなかったものを学び、それを応用することで「凡人のクリエイティブ」が生まれると思っています

前頭葉が未発達な30歳までが勝負

—— 最後に、「失敗が怖い」と思っている大学生にメッセージをいただけませんか?

『ブレイン・ルール』って本で最近知ったんですけど、人間の脳の部分に「前頭葉」っていうのがあるんですよ。前頭葉は人間の感情を抑制したり、社会性を作ったりしているんですが、30歳まで未発達な部分で、30歳でようやく発達が完了します。前頭葉の発達が完了して、自分の社会性が作り上げられてしまうと、型破りなチャレンジをリスクに感じてしまうんですよね。

20代だったら、「若くて健康だったら飯食っていけるよ」ってチャレンジできるのに、30歳を超えて前頭葉が発達しちゃうと「食えなくないか」ってリスクに感じてしまうんです。だから、よく言われる「若いうちにチャレンジしとけ」っていう昔の人の言葉は正しいわけですよ。上手くいっている起業家も、若い時にチャレンジしている人が圧倒的に多いです。

まあ言いたいのは、脳の構造的にも若いうちしかできないチャレンジがあるんで、今思ったことを、とにかくやってみるのが一番ってことです。めちゃめちゃ反対する人がいるかもしれないけど、それでもやってみた方がいい人生歩めるんじゃないかと思います。

未来なんて予測不可能な訳ですし、いい大学出ていい大企業入っても、銀行で4万人削減、なんてことが待ってたりするんですよ。だったら若いうちにチャレンジして、自分の未来を自分で切り開けるようになっておく方がいいです。

若いってやっぱ武器だし、前頭葉も未発達だし。30歳までが勝負ですよ。

株式会社フーモア

設立 2011年11月11日
資本金 256,500,000円(資本準備金含む)
売上高 非公開
従業員数 77 名(アルバイト含む) ※2019年8月31日現在
事業内容 ゲームイラスト制作事業・漫画制作事業・エンタメコンテンツ制作事業
URL https://whomor.com https://www.wantedly.com/companies/whomor/projects#_=_
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