俺、何でこの会社作ってんの
—— 坂元さんは採用コンサル会社を立ち上げていらっしゃいますね。これはリクルート時代の経験がきっかけで立ち上げたのでしょうか?
いえ、実はもともとこの会社って、採用コンサルをやろうと思ってなかったんです。
何で作ったかっていうと、家業の和菓子屋を継いだ時、和菓子屋からは給与を取れるような状態ではなくて、でも生計をたてなければいけないと言う中で、実家の和菓子屋が不動産を結構持っていて、それらを余らせていた状態だったので、不動産賃貸の管理会社を作ってそこから給与を取ろうと考えたんです。
甘い考えで、「駅前だし、ちゃんと貸し出せば、当時サラリーマンで稼いでた収入分ぐらいは不動産収入で取れる」って超安易に思ってました。
それで、10月1日に登記日を設定して、不動産管理会社を設立することにしました。
6月ぐらいから登記の準備を始めて、資本金100万円と登記費用を払ってしまいました。「まあこの3~4ヶ月の間に不動産募集しとけば決まるだろうし、自分の収入落とさずに何とかなるだろう。」と思っていました。
登記準備期間から1か月ずつ過ぎていって10月になったんですけど、もう全然買い手がつかなかったです。4ヶ月募集ゼロで、これどんなにやってもゼロなんじゃないかって絶望しました。
会社って何もしてなくても、売り上げがゼロでも、法人税が10万ぐらいかかります。かつ、その会社から月20万の給料をとることがもう決まっていました。資本金が100万円だからもって最長で5ヶ月ですね。
自分で資本金100万払って給料で100万戻ってきてプラマイゼロ。そこにプラスで税金10万があって、会社作るのに、30~40万円払ってます。もう無駄でしかなかったです。
「俺、何で150万もかけてこの会社作ってんの」って。
自分が持っている能力ってHRしかなかった
—— 立ち上げ早々に大ピンチを迎えたんですね。そこからどう軌道修正したのでしょうか?
最初は何とか会社の売り上げを出すことを考えました。でもその時は和菓子屋を継いでるので両立しながら、稼げる方法を考えないといけませんでした。和菓子屋の仕事は毎日朝の9時から夜の7時までです。限られた時間のなかで、頭で考えてアウトプットして、納品して売り上げにしないといけません。
そう考えた時に、自分が持っている能力ってHR(Human Resource)の能力しかなかったんです。知り合いの会社やサラリーマン時代のお客さんに「会社作ったんですよね。HR関係で困ってることないですか。」って声をかけまくりました。
そうするとチラホラ相談事が出てきて。たとえば、単発で「なんか最近人が来ないんだけど、どういう求人の仕方で打ち出したらいい?」という悩みをいただいて。詳細を聞くと媒体の選定や打ち出し方で何とか出来ると感じたので、うまくいったら、今までかかっていた採用コストから浮いた10万円もらいますね、という提案をさせてもらいました。
もっと大きい仕事だと、リクルートの時から懇意にしてるお客さんから、派遣の営業所を作りたいって話がありました。で、その営業組織をどう作るのか、どんな人を採用したらいいのか、どういう制度で、どうマネジメントしたらいいのか、給与設計はどうしたらいいのか、といったHRコンサルの仕事全般を半年ぐらい行いました。
アウトプットベースで提案して、営業組織が出来上がってからは月1回ぐらいで見にいって、改善のアドバイスをし、立ち上がりまでお手伝いしました。
他にも細々した仕事を入れて、1期目で年間約400万円、売り上げることができました。
それ以降、周りに派遣会社の営業組織を立ち上げた、など実績が周りに知られるようになり、紹介で仕事を受けたり、単発で仕事を受けた先の会社が顧問契約に繋がったりするようになりました。「あいつそういうのやってくれるんや。困ってる人がいたら紹介しよう」て感じです。
たとえば、今役員をさせて貰っている事業承継支援会社の親会社の株式会社edu.styleさんというところは、単発で求人の効果が出ないから相談に乗って欲しい、という仕事でとても効果が出たので、そこから顧問契約を結びました。
自爆しかけて、自分で取り戻すことができました笑
30超えると、自分の強みになる領域もっとかないと死ぬな
—— 今振り返って会社が潰れかけた原因はどこにあると思いますか?
何も考えてなかったから、につきますね笑 すごく安易でした。
「ここって借り手つきますかね。」って多くの不動産業者に聞いて、「ここ駅前なんで大丈夫ですよ」って軒並み言われました。当時は知見がないから、専門家がいうことを丸呑みしちゃったんです。
でも、よく考えたら借りる人がいないのは当たり前です。もともと工場の1階部分しか使ってない不動産の、2階と3階部分を貸そうとしてました。1階で人が多く出入りするのに、誰も借りるわけないですよね。不動産という知識がないもので安易に利益がでると思ってしまったのが、一番の原因です。
逆にこの危機を乗り越えられたのは、自分に知見があって、自分にしか出せない価値がある領域を持っていたからです。もうあれから4年経ちますが、「30超えると自分の強みになるような領域をちゃんともっとかないと死ぬな」というのは、身をもって知りましたね。もし私にHRの知識や経験が無ければ、自分が作った1個の会社を潰していました。絶対に。
今やったら4つ潰れても、なんとかする。
—— 失敗を乗り越えた経験から若者に伝えたいメッセージはありますか?
20代って、自分が30代、40代、50代のキャリアで何を強みにするかを見出していく期間だと思います。それは独立するしない関係なく、20代の中で強みを見つけて、それを磨くためにガムシャラに頑張って欲しいです。
何か困難にあった時に、売れません、できません、なんて通用しないですからね。
自慢とかではなく、今の自分だったら、4つの経営に携わっていますが、もし4つ潰れて銀行口座に1円もない、ってなってもなんとかなるという自信は出来ました。会社を立ち上げてから、自分のHRの知見が深まりましたし、起業に関する経験もそうですね。もし潰したとしてもそれはそれでまた経験になるんじゃないか、と思ってます。
最近よく、大学生の方や若手社会人の方から、「安定したいのですが、どういうキャリアを選べばいいですか?」というご相談を頂くのですが、「自分自身のキャリアを安定させたい・本当の安定を手に入れたい」、という人ほど是非、自分はこの領域ならもし今いる会社がなくなっても何とかなる、という自信を持てる領域と強みを、20代でガムシャラに頑張ることで見つけて欲しいと思います。